第785話 稗月ノ眠リ唄5
*
とある土曜日。
プルルと家の電話が鳴った。
「理沙ちゃん、ちょっと出てくれる?」
接客中の母さんが理沙に電話を取るように頼む。
「うん、任せて。おかーさん」
たたたっ……と、駆け足の理沙。
「はい〝和菓子屋・稗月〟です」
『ん? 誰だ?』
「わ、私は理沙ですけど貴方は誰ですか?」
『俺か? 俺だよ、俺、ヤギだよ』
たたたっ……と、また駆け足の理沙。
「おかーさん! 大変! ヤギから電話来た!」
「あー、そりゃ俺俺ヤギだな。詐欺の一種だ無視しろ」
「こら、ユキマサ。馬鹿なことを言って無いで手を動かしなさい。それに何? 俺俺ヤギって?」
饅頭を包む俺に母さんが言った。今忙しいんだよ。馬鹿話の一つでもしなければ疲れてやってられん。今は所謂、お得意様からダース単位で饅頭の注文入ってるからな。
お得意様は会社員。えらく家の店の味を気に入ったサラリーマンが営業で家の饅頭を時折たくさん買ってく。
「とにかくヤギから電話だよーー!!」
「ん? 理沙、今ヤギって言ったか?」
「おとーさん! うん、ヤギから電話!」
「ん、あ、親父! 仕事サボるな!」
そそくさと電話に向かう親父に俺が言うが「まあ、まっとけ」と、構わず親父は電話に向かう。
「おー! やっぱか! 先日は世話になったな!」
旧友にでもあった様子の親父は10分程度、あーだこーだを楽しげに話した後に電話を切った。
「何だ、親父の知り合いか?」
「おとーさん、ヤギに知り合い居るの? 凄い!」
「こないだ花見に行ったろ? あの山の持ち主だ。名前は柳総一。だから通称ヤギ。俺の古い友人だ」
「あなたー。ヤギさん何だって?」
「ん、ああ。桜は見れたかってよ。最高だったと伝えといた」
「今度何かお礼を持っていかないとですね」
「なら、家の饅頭を沢山やればいい。あいつ家の饅頭好きだからな。あ、それと町内会のイベントに一緒に出席してくれって言ってたな」
ポンと手を叩き親父は言う。
「町内会のイベントって言うと何か出し物でもやれって話か?」
俺は親父におい待てとばかりに問いかける。
「いや、家は出張〝和菓子屋・稗月〟でいいらしい。ヤギは何かやるらしいが詳しくは聞いてない」
まあ、妥当な所か。人の集まる場所での飲食販売はかなり儲かる。祭りの屋台なんか良い例だ。
……と、言うワケで翌週の週末、町内会のイベントに向かった。店は臨時休業というか出張中だ。
町内会のイベントは近くの公園で行われた。
ってかここ理沙と初めて会った公園じゃん。世間は狭いよな。まあ大きめの公園なんてここぐらいか。
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