第783話 稗月ノ眠リ唄3
「おかーさんも飲むの? 珍しいね」
「ふふ、ごめんなさいね。理沙ちゃん、桜は私も大好きだからたまにはって思ってね」
「酔ったおかーさん見てみたい!」
興味津々で花見でテンションが上がってる理沙がそんなことを言い始める。
「理沙、吹雪はこう見えて酒はザルだぜ?」
「おとーさん、ザルってなあに?」
「底無しに酒を飲める人のことじゃ。要するに酒が強いってことじゃの」
理沙の質問には爺ちゃんが返した。
あー、昔は結構家でも飲んでたっけ?
こう見えて親父より酒強いんだよな母さん。
「おかーさん、カッコいい!」
「あら、ありがと。理沙ちゃんもジュース飲みなさい」
機嫌を良くした母さんはスーパーで買ってきた100%のオレンジジュースをコップに注いでいる。
ちなみにこのコップは理沙のお気に入りだ。婆ちゃんと母さんと買い物に出掛けた時に買って貰ったらしい。コップには珍しく蓮の花の刻印が刻まれている。
「ありがとう! オレンジジュース美味しい!」
「母さん俺にもくれよ」
「ユキマサにはこっちね」
と、渡されたのは少し温くなった世界一有名な黒い炭酸飲料だ。これ温くなると美味くないんだよな。
オレンジジュースもそれなりに温くなってんだろうが、ちょっとチョイスに偏りがありませんかね?
「ユキマサ、氷あるぞ? それ温いと不味いだろ?」
親父から後光が差して見えた気がした。
「あるなら言ってくれよ? 少し飲んじまったじゃねぇか」
氷の存在に俺は歓喜しながらも愚痴を言う。
そーいや、クーラーボックス持ってきてたな。気づけよ俺!
それからも俺たちはどんちゃん騒ぎだった。
親父が芸をしたり、スマホから流れる曲に合わせて理沙が歌を歌ったり、俺は途中で酒を飲んでない婆ちゃんの運転で追加の酒の買い出しに行ったりと様々だった。
つーか、母さんが飲むと止める奴いなくて永遠と飲んでるぞ!? 婆ちゃんはあまり強く言わないし。
コンビニで酒と氷、つまみにホットスナックを買い、俺は荷物を持ち車に詰め込む。
「ユキマサ、ありがとう」
「これくらい屁でもねぇよ。婆ちゃんこそ見た目は20代だからって無茶すんなよ。体弱いんだし」
車に乗り、スマホから繋いだ音楽を聞きながら、俺は珍しく婆ちゃんと二人きりで話しをした。
「楽しいわね、ユキマサ」
「ん? ああ、楽しいな」
「あの人がいて、木枯がいて、吹雪ちゃんがいて、ユキマサがいて理沙ちゃんがいる。こんな日々がいつ迄も続けばいいのに」
「永遠の命は無いが、普通に行けば後数十年ぐらいは続くんじゃねぇか?」
「数十年……そうね。それでも私には短いぐらいだけど。でも、数十年出来るだけ永く一緒に居たいわ」
寂しげな、嬉しげな、婆ちゃんの色白な美人な横顔を車の助手席から見たのを今でも覚えている。
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