第782話 稗月ノ眠リ唄2
ある週末の朝、親父が唐突に口を開いた。
「花見に行こう!」
その日の朝食を食べ終わり、食器を片付けている時のことだ。皆、一瞬で親父に目が行く。
「親父、四月も終わるぞ? 花見には遅いんじゃないか?」
「おおっと、バカ言っちゃイケねぇよ。ユキマサ、実はな友達の持ってる山があるんだが、そこは桜が遅咲きでな。今が丁度見頃なんだ」
抜かりはないぜ? と、どや顔の親父。
どや顔までイケメンだから反応に困る。
「なら、お弁当ね。丁度昨日スーパーの安売りで食材を買い込んどいて良かったわ」
母さんが言う。
「お花見かぁ。私は学校給食でやった以来だよ」
「おう理沙、満開の桜が何千本と並ぶんだ。学校の桜なんて目じゃないぜ」
「本当? 楽しみだな」
目をキラキラさせる理沙に親父も満足そうに笑う。
「善は急げじゃ。早速準備に取りかかるぞ」
爺ちゃんの一言で全員了解とばかりにそれぞれ行動に移る。具体的には婆ちゃんと母さんが花見御膳を用意し、爺ちゃんと親父は酒を買いに向かい、俺と理沙がブルーシートだのアウトドアグッズとかを用意した。
二時間ほどでお弁当の準備が整い、六人乗りの黒のバンを行きは爺ちゃんの運転で花見に向かった。
高速に乗り一時間弱で目的の山に着いた。
〝私有地〟の看板があったが親父が山の持ち主に予め連絡していたのでスルーし入山する。
「あ、桜だ!」
ポツポツと山道に出てきた桜の木を見て理沙が嬉しそうに声を上げる。
「まだまだこんなもんじゃ無いぜ!」
少し開けた場所に出ると辺りは桜並木だ。
満開の何千本桜が俺たちの目の前に広がった。
「うわぁぁ!」
「あらあら理沙ちゃん綺麗ね~。吹雪ちゃんも」
「そうですね、お母様!」
「満開じゃの、おい木枯早く飲もう」
「いいねぇ、最高だぜ!」
「爺ちゃんも親父も花より酒かよ」
桜に感動する、理沙、婆ちゃん、母さんと酒が早く飲みたい、爺ちゃん、親父と感想が分かれる。
え、俺? 俺は今は桜かなぁ。だって小学生だし。
さっそく、桜が一番綺麗に見える場所にブルーシートを敷き、稗月家お花見大宴会が始まる。
特に昼間から酒が飲めると爺ちゃんと親父には大好評だった。親父の話しだと歩いて五分ぐらいの少し下った所に水洗のトイレもあるらしい。
「いいねぇ、花見酒だ」
おちょこに日本酒を注ぎ、酒に反射し酒の水面に映る桜を見ながら親父はクイっと一杯いった。
「あなた、私にも一杯くださいな」
「おうよ! 吹雪お前も飲め飲め」
「はい。帰りの車はお義母様がしてくれるそうなので私もいただきます」
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