第781話 稗月ノ眠リ唄
*
三人が寝落ちした頃、俺は窓から差し込む月明かりを見ながら昔の事を思い出していた。
(随分と遠くまで来たな。異世界まで来てるし。地球一周どころじゃないな)
夢うつつの中、俺はこんなことを思い出す。
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俺は親父に憧れていた。
漫画が好きで野球観戦が好きで競馬やパチスロも好きな道楽親父だったが、そんな親父の生きざまが大好きだった。
小さい頃は親父の背中を見て育ったと言っても過言じゃない。そしてこうも思った。ああ、敵わねぇなと。親父がカッコよ過ぎて、偉大過ぎて、憧れ過ぎて。
そんな俺の昔話を夢うつつの中で話そう。
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9年前、俺が7歳の時の話しだ。
「おい、親父! 朝だぞ! 婆ちゃんと母さんと理沙が朝食作って待ってる」
「後、5分……」
「5分もすれば理沙のフライパン目覚ましが来るぞ」
「じゃあ、4分は安眠できるワケだな」
「ポジティブだな。じゃあ俺も寝る」
と、俺が親父の隣で寝始めると。
カーン、カーン、カーン!!
理沙によるフライパンとおたまによる金属音で眠りを妨げられた。
「おい、理沙! まだ3分だぞ!」
「3分? 何の話し? というか、おとーさん起こしてって言ったのに何でユキマサも寝てるのよ?」
「そこに布団があるからだ」
「ZZZ……」
「おとーさんも起きて!! 後ユキマサは意味の分からないこと言わないでさっさと起きて! 朝ごはん冷めちゃうよ! ごはんは大切なんだから!」
理沙は実の父親から虐待レベルの行為をされていた。朝ごはんどころか、ろくな食事すら貰えてなかった。朝食を食べる。そんな普通なら当たり前の事が理沙には無かったのだ。そう考えると朝食を無視して惰眠を謳歌するのは何だか悪い気がする。
ので、俺と親父は欠伸をしながら起床する。
席に着きいただきますをし朝食を食べる俺たち。
「お、今日の味噌汁は吹雪のだな。お袋のとは違う」
「正解よあなた」
「でも少しいつもと違うな。理沙が手伝ったな?」
「おとーさん凄い、何でも分かるんだ」
理沙は目をキラキラさせる。理沙も親父大好きだもんな『小学校で好きなタイプは?』って聞かれた時に『おとーさんかな』とか言ってたのを耳にした。
「手料理は何でも十人十色だからな。理沙は将来素敵なお嫁さんになるぞ」
「えへへ、そうかな♪」
「卵焼きは魅王じゃの」
「おじーちゃんも凄い!」
「ふふふ、隠し味はマヨネーズよ」
そんな朝からてんやわんやの賑やかな心地よい時間が過ぎていく。
こんな時間がいつまでも続けば良かったのにな。
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