第77話 ミリア湖2
「──動物の〝変異種〟? 言われてみれば、ヒュドラの時も『ヒュドラの〝変異種〟だ何て』みたいな事を言っていたが〝変異種〟と言っても色々と種類があるのか?」
俺はいい機会だと思い、クレハに質問してみる。
「うん。大きく分けて3種類かな? ──ギルドでは変異種は正式には〝特別変異種指定魔獣〟もしくは〝特別変異種指定魔物〟それと、この〝青い空竜〟は動物の〝変異種〟だから〝特別変異種指定動物〟って呼ばれてるよ」
俺が異世界から来た事を知るクレハは、この〝異世界〟では一般常識の範囲だと思われる──基礎的な知識を俺に分かりやすく教えてくれる。
「その3種類を総じて〝変異種〟って呼ぶよ。報告の際とかだと、元の種類が分かれば○○の変異種って言う感じかな?」
「言われてみれば……ヴィエラとリーゼスが、フォルタニアに、双熊の変異種が出ただとか報告してたな?」
「うん、その場合は〝双熊〟は、元の種類は魔物の扱いに分類されるから、正式には〝特別変異種指定魔物〟って扱いになるかな。ちなみに〝変異種〟は基本的には……動物→魔物→魔獣の順番で危険度が増してくから注意だよ」
(基本的にって事は例外もあるって事か?)
「ち な み に〝変異種〟は、出現自体が本当に珍しいんだからね? それに、出現するのは魔物の変異種がその殆どだし……」
「そうなんだな? 意外と話しに上がるから、ポツポツぐらいには出るのかと思ってた……」
「そう言うと思ったよ……その魔物の変異種ですら、最低でもギルドの騎士隊を2隊以上は編成して戦うような相手だよ? こないだの魔獣の──しかもヒュドラの変異種何て、脅威度は最悪な部類だからね……?」
呆れ顔のクレハは『分かってる?』みたいな視線で俺を見て来る。
「普通の魔獣のヒュドラですら、街の近くに出たら、避難勧告が出るぐらい危険なのに……その〝変異種〟何て……今考えても、身体がゾッとするよ……」
「ちなみに、普通のヒュドラはどんな感じなんだ?」
「一般的な魔獣のヒュドラは、赤い鱗で覆われてて、首は5本で毒は吐かないし、少なくともあんな再生能力は無い筈だよ? あんなの聞いた事ないよ……?」
「確か、俺の倒したヒュドラの首は6本で鱗は紫で毒は吐くしそれに再生もしていたな」
「だから〝変異種〟なんだよ?」
……そう言われてもな。
それに、俺の本来の目的は──本物の神様である、アルテナから頼まれた魔王討伐だ。
こう言っちゃあれだが……ヒュドラの変異種がどうのこうので、ドヤドヤしてるわけにもいかないからな。
それと、ヒュドラの変異種を相手にクレハ達の〝第8騎士隊〟が壊滅に追い込まれたのは、毒だとかの、イレギュラーの部分が致命的な物だったからだろう。
事前にあの毒だけでも、対処が可能なら、あそこまでは追い詰められてはいなかったと筈だ……
少なくとも、その解毒剤が効かない毒も〝聖水〟とやらでは解毒ができたんだからな。
つーか、クレハは通常種は毒は吐かないと言っているが、ヒュドラは元いた世界の空想上の話になるが、毒は吐いた気がする。異世界とじゃ少しズレがあるのかもな。
後、どちらかと言うと、あのヒュドラの変異種なんかよりも、六魔導士のエルルカのが普通に強いだろうしな? 他に思い当たるのは、アーデルハイト王国の妖怪世話……じゃなくて〝千撃〟や〝桃色の鬼〟──
それと、あの街で偶然にもすれ違った……
白フードで顔を隠してた少女──ノアだ。
……あいつに至っては本当に驚いた。
(レベルも表示上限の〝100↑〟だったしな……レベルだけを見ても、人類のトップクラスの実力者である筈の、レベル94の六魔導士のエルルカ越えだ……)
ノアに会った時に、俺は特別辺りを警戒していた訳では無いが、決して気を抜いていた訳でも無い。
それなのに、俺はノアに簡単に背後を取られ、肩をトントンと叩かれるまで気が付かなかった。
クレハに〝ノアって人物を知ってるか?〟って聞いてみたいが、ノア本人には『秘密にしてね』と言われてしまってるから聞くに聞けないんだよな……
ノア本人に〝ステータス画面〟を見せて貰ったから名前と年齢を知ってるが、実際に会って、名前と年まで知ってるのに、その人の顔は知らないって言うのは、我ながら中々に珍しいケースだと思う。
「──ちなみに質問だけど、ユキマサ君の故郷では、ヒュドラとかの魔獣や魔物はいなかったんだよね?」
「ああ。でも、実在はしていなかったが、言葉自体はあったな……というか、神話や本の中での空想上の話しとしての言葉やイメージでだけどな?」
「そうなの? 何か、お伽噺みたいな感じだね」
ふふ。と楽し気にクレハが笑う。
「まあ、ヒュドラに関しても、首が9本あるだとか、100本あるだとか、翼があるとか無いだとか、話しによって様々だったよ──」
(〝元の世界〟でイエティは探した事あったけど、流石にヒュドラは探した事なかったな……)
「だがら、こっちに来て〝魔力〟や〝魔法〟もだが、俺の生まれた世界では、本の中の話しでしかなかった──ヒュドラや、それこそエルフのエメレアを最初に見た時は、本当に色々な意味で驚いた」
まあ、それでも、本物の神様である……
アルテナに会った時が、一番驚いたんだけどな?
「……でも、その本とか、首が9本だったり100本って流石に雑すぎない? というか、首多すぎ……」
俺の話にクレハはツッコミ気味の返事をする。
「あはは。そうだな、俺もそう思う。でも、論より証拠だ。この世界にはヒュドラは実在するし、魔力も魔法もあって、エルフもいる──もし機会があれば『異世界じゃ、ヒュドラの首は5本が常識らしいぞ』って、それとなく伝えておいてやるよ?」
まさか〝元いた世界〟の、神話や本も、こうして──遥か遠くの異世界で『首多すぎ……』だなんて、ツッコまれるとは、夢にも思わなかったろうな。
「何て言うか……ユキマサ君て本当に呑気だよね……べ、別に私はそういう所……嫌いじゃないけど……」
少しため息を吐きながら、呆れ気味なクレハ。
「──クレハ! そろそろ行くわよー!」
そんなこんなを、俺とクレハが少し話し込んでる間に……青い竜こと──空竜の変異種であるタケシに、今まで乗っていた空竜ごと、タケシの背中に乗る、エメレアとミリアがこちらに向けて手を振ってくる。
てか、変異種ってのは、比べるとこんなにも違うのか? サイズだけ比べても、今まで乗っていた空竜とじゃ、大人と子供ぐらい違うな──?
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