第770話 鶴の覚醒25
「しなのんさん!? 何でここに!?」
「こんにちは、ミリアさん。私のこと覚えててくれたんですね! 私は女将さんと買い物です」
少し後ろには〝料理屋ハラゴシラエ〟の女将であるメリッサの姿が見える。
「私、今実は修行中でして、最低限の自衛目的で体術を女将さんから教わっているんです」
あれぐらいなら今の私でもちょちょいのちょいです。と、豪語するシナノ。
少し前のシナノなら「慰謝料請求されたら嫌なので関わりたくありません」とか言ってそうだが、今のシナノは少し違った。友達を馬鹿にされて黙ってるほど、非常ではない。
後、強いて言うならば〝ハラゴシラエ〟の給金のお陰で心にゆとりができていた。
「ハッ!! 私としたことがハイエルフ様の前で何を……すいません。カッコつけて出て来ましたが、今の無しでもいいですか?」
エメレアを目の前にしてシナノはガクブルだった。間違いない、敵に回しては成らない存在だと。
「ハイエルフ様って、私のことですよね? 大丈夫ですよ。私には何も気を使わなくても」
「そ、そういうワケには……う~、元引きこもりはチンピラはともかくちゃんとした権力には弱いんです」
別にちゃんとした権力では無いのだがと……
エメレアは少し「えーと……」と言葉を詰まらせる。
「ミリアちゃん、こんにちは。そちらはエメレアちゃんでいいのよね?」
シナノに下がりなさいな。と、ジェスチャーしながら現れたのはさっきから後ろで様子を見ていた〝ハラゴシラエ〟の女将さんメリッサだ。
「こんにちはございます」
「あ、はい、こんにちはです」
「驚いた。本当にエメレアちゃんなのね。ああ、ごめんなさいね。雰囲気も髪の色も違うから、つい……記憶は戻ったの?」
「いいえ……すいません」
「私に謝ること無いわよ。こちらこそズカズカとごめんなさい。またお店に寄ってね。っと、私たちはこの辺で。シナノちゃん行くわよ」
「あ、はい! ミリアさん、エメレアさんもまたです! 次はもっとお話したいですね! それでは」
メリッサの後を追うシナノを見送り、再び二人になると。
「買い出し、行こっか」
「そうですね」
再び歩を進める。
*
「エメレア、縞牛とねじれ牛どっちがいい?」
「えーと、そうですね……」
自分の好きな食べ物も思い出せないのだ。牛の味が分かるワケが無い。
でも、折角、良し悪しを聞いてくれるミリアにはちゃんと返事をしたかった。
「あはは……困っちゃうよね。エメレアは縞牛のが好きだったからこっちにするね。後は玉ねぎと人参とピーマンかな。バーベキュー楽しみだね!」
少しだけ寂しそうな顔をした後にミリアは買い物を続ける。
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