第76話 ミリア湖
凄いなミリア、湖持ってんのかよ?
(つーか、湖持ってるってのが、俺はあまり聞いた事が無い。山を持ってるとかはたまに聞くけど……)
──それに、この湖は並みの湖じゃない。
(別に、湖として、広さはそこまで大きいわけではないのだが……まあ、それでも湖の外周を走れば、10kmぐらいはあるんじゃないか?)
水の透明度は高く、水の中を森のように広がる水草等もハッキリと見える。そして空竜に乗って空から見てるから分かるが──湖の真ん中へ近づけば近づくほど、湖の水深が異様なまでに深くなっている。
湖の中に崖みたいな物があり、そこを境に、急激に水深が深くなっているのが分かる。ここまで透明な水だから、水底まで見えるかなと思ったが……この透明度でも、湖の真ん中辺りは底が見えないぐらい深い。
水深は軽く300m以上はありそうだ。
〝元いた世界〟なら、普通に観光地になれるぞ?
あー、でも水の中には魔物もチラホラといるな……
「──クレハー!!」
そんな事を考えていると、嬉しそうな声音で俺達に……じゃなくて、クレハに手を振りながら、空竜に乗ったエメレアとミリアが近づいてくる。
「二人ともお疲れ様、今回も魔物と遭遇せずにこれてよかったね。それにミリアはすっかり〝空竜〟の乗り方が上手になっててビックリだよ!」
「でしょ、でしょ! ミリアったら凄いんだから!」
嬉しそうに答えるのは、2人乗りの空竜のミリアの後ろに乗っている、鼻息を荒くし、ドヤ顔でルンルン気分のエメレアだ。
「わ、私が凄いんじゃないよ。クレハやエメレアが、分かりやすく乗り方とかを教えてくれて──後は、空竜が乗ってる時に色々と教えてくれたからだよ」
そう言いながら、空竜の頭をなでるミリア。
「ミリアは動物と話ができるのか?」
俺は、ふと思った疑問をミリアに問いかける。
「そ、そういう訳じゃないんですけど……言葉とかじゃなくて、昔から仲良くなった動物の気持ちや考えは、何となくですけど分かるんです……!」
少し恥ずかしそうにしながら答えるミリア。
「十分だと思うぞ? 凄いなミリアは」
道理で空竜も懐いてるわけだ。それにミリアの様子を見てると、動物にはテンパったり噛んだりするような様子も無く、スムーズに話している。
「ちょっと! 何、私のミリアまで誑そうとしてるのよ! ミリア湖に沈めるわよ?」
ギラリとエメレアが俺を睨みながら湖を指さす。
(俺は一体……この異世界で何回エメレアに睨まれることになるんだか……)
「つーか、ここ〝ミリア湖〟って言うのか?」
ミリアの湖なんだから別に不思議ではないが……
「あ、それは私達が勝手に呼んでるだけだよ?」
『呼びやすいしね』と、付け加えながらクレハが教えてくれる。
「わ、私は全然その呼び方で良いです。せっかくエメレアやクレハが考えて付けてくれましたから……!」
親友のエメレアとクレハが、名前を付けてくれた事が嬉しいのか、もじもじとしながらミリアが〝ミリア湖〟の呼び方を承認する。
そんなミリアの言葉を聞いてたエメレアが、感動して体制を崩し〝空竜〟から落ちそうな所を「わわッ、落ちると危ないよ。魔物もいるから……!」と寸での所でキャッチしている。
「そうか。じゃあ、この湖は〝ミリア湖〟だな」
持ち主が許可したんだ。ならそれで良いだろう。
と、その時、次の瞬間……
「──!!」
──こちらに何か来る!
そう感じた俺は、気配を感じた方向を警戒しながら、臨戦態勢を取る。
──ビュン! バサリッ!!
そんな音を立てながら、俺達が来た渓谷とは、対になる湖の対岸の奥の森から、翼を持った竜がこちらへと、猛スピードで向かってくる。
「何だ、こいつは……魔物か!?」
(……何となく空竜……にも似ている気がするが、俺達の乗っている空竜よりも、遥かにサイズが大きい……)
色も俺達が乗っている空竜や〝借竜所〟にいた他の空竜も、その全部が茶緑色の外見をしていた。
だが、この竜は全身が青い鱗で覆われている。
(それに魔力も高そうだ、そこらの魔物なんかよりも格段に強い──)
そして、何故かコイツは、俺だけを……警戒心半分と敵意半分といった形で、真っ直ぐに見ている。
「──あ、タケシ! 大丈夫だよ。この人はユキマサさんって言うの、私たちの味方だよ!」
と〝青い竜〟にミリアが親しげに話しかける。
するとこの〝青い竜〟の俺への敵意や警戒心がどんどん下がって行き……やがて「グウッ!」と頷くように返事をし、今度はゆっくりとミリアの方へと嬉しそうに近づいていく。
「た、タケシ……?」
それってこの青い竜の名前か?
パッと見はタケシ感はゼロだぞ……?
(何だ……この違和感は……)
昔〝元いた世界〟で孤児院に迷い込んできた野良猫に、理沙が餌をやり『ポチ』って名前を付けた時ぐらいの、猛烈な違和感のある名前だ。
頭に〝?〟を浮かべて困惑する俺に──
「ユキマサ君、大丈夫だよ。あれはミリアのというか……この湖を昔から守っている〝空竜〟の〝変異種〟だから。簡単に言えば、ミリアのお友達かな? ──私も最初見た時は、凄くビックリしたけどね……」
と、最後の方の台詞は、その時の事を思い出してか『あはは……』と苦笑いでクレハが教えてくれる。
「変異種?」
俺はクレハに聞き返す。
「うん。あの〝青い空竜〟は、種類の少ない魔力を持った動物である〝空竜〟の、その中でも極めて稀少な──動物の〝変異種〟だよ」
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