第756話 鶴の覚醒11
*
団子屋・花選を後にしたあと、ミリアとエメレアは街を見て回っていた。
「あ、このお店で前にクレハと三人で服を買ったんだよ」
「そうだったんですか」
ダメだ。思い出せないと悄気るエメレア。
「ああ、ごめんね。困らせちゃうよね」
「あ、いえ、大丈夫です。もしかしたらこういったことの積み重ねで思い出せるかもしれませんし!」
エメレアは無理に前向きに返事をした。
でも、そんなことはミリアにはバレバレだ。
「いいんだよ。エメレア、無理しなくて」
「ミリアさん……」
「あ、えと、エメレアは確か森が見たいんだよね! 夕飯の食材とか買ったら直ぐに家に戻ろうか。日暮れまではまだ時間があるから」
善は急げだ。と、ばかりにミリアはエメレアの手を引き、慣れた様子で街のお店から卵や野菜や肉を買い込んでいく。
家に戻ると荷物を置き、湖とその周りの森に足を運ぶ。
「魔物はタケシがやっつけてくれてあるから安心してね。たまに〝ドロップアイテム〟が落ちてるよ」
深く息を吹い森林浴を満喫してるエメレアにミリアが声をかけた。
「はい、いい森ですね。木々が喜んでる。て、わ、ここから先はフルーツだらけ!?」
「あ、うん。ここは果物ゾーンなんだ。家の物だから好きなだけ取っていいよ。あ、シャリシャリ梨だ」
取れ立てでも冷たくて美味しいんだ。と、ミリアはシャリシャリ梨なる三日月型の梨をいくつか見繕っていく。
「じゃあ、私もお一ついただきます」
エメレアが手にしたのはツルツルみかんだ。みかんの白い筋が無い珍しいみかんだ。
「お団子と一緒に湖で食べよっか。今日は風が弱いから心地いいと思うよ」
「はい、ありがとうございます」
森から湖に移動し湖を一望できる少し高台に二人は座った。
「あ、美味しい……」
ツルツルみかんを食べたエメレアは少し目を見開き呟く。
「それね、昔からエメレアが好きだったんだよ!」
「そうなんですか。私ってみかんが好きだったんですね。ごめんなさい。思い出せません……」
「大丈夫だから謝らないで、悪くないのに謝られると私逆に困っちゃうよ……」
「すいません……って、私ったらまた、すいません。あっ……」
「大丈夫だよ」
よしよしって頭を撫でるミリア。
「エメレアはね、いつもこんな感じに、ううん、もっと上手に私の頭を撫でてくれたんだ。それが私は嬉しくて、ついエメレアに甘えちゃうんだ」
今日は逆だね。と、ミリアは微笑んだ。
柔らかな絹のようなエメレアの綺麗な金髪の髪の感触と共に少し困ったような、でも嬉しいようなエメレアの表情をミリアは忘れない。
★★★★★★作者からのお願い★★★★★★
作品を読んで下さり本当にありがとうございます!
・面白い
・続きが気になる
・異世界が好きだ
などと少しでも思って下さった方は、画面下の☆☆☆☆☆から評価やブックマークを下さると凄く嬉しいです!
(また、既に評価、ブックマーク、感想、いいねをいただいてる皆様、本当にありがとうございます! 大変、励みになっております!)
★5つだと泣いて喜びますが、勿論感じた評価で大丈夫です!
長々と失礼しました!
何卒よろしくお願いします!




