第750話 鶴の覚醒5
「そうですか。話を聞くにエメレアさんの場合はエピソード記憶だけが抜け落ちた記憶喪失のようですね」
話を聞いたフォルタニアはそっと症状を分析する。
「エピソード記憶?」
フォルタニアの言葉に反応したのはミリアだ。
「人には陳述的記憶と手続き記憶の二種類があります。エメレアさんの場合は陳述的記憶の種類に当たる経験した出来事を覚えるエピソード記憶と学習することで獲得した意味記憶の内、エピソード記憶が喪失したと見るべきですね。
手続き記憶は問題無いかと思います。手続き記憶まで喪失してた場合は家事どころか着替えすら一人では出来なくなりますから」
フォルタニアの言葉にエメレアはショボンとしている。
「私、怖いんです……思い出したいのに思い出すことが自然と怖くて……身体の奥が冷たくなってズキンと痛むんです。ミリアさんみたいな優しい人との記憶はきっと凄く楽しいことのハズなのに、全てを思い出したら、楽しいって気持ちと反比例するような辛い思い出したくない記憶まで甦ってしまいそうで……いえ、すいません……それじゃ私は現実から逃げてるだけですよね。本当情けない……すいません……すいません……」
泣き出してしまうエメレア。涙を溢すエメレアにミリアは優しく背中を擦った。
「エメレアさん。謝らなくていいんですよ。それに幸いと言いますか、あなたにはまだ心からエメレアさんを支えてくれる友人……いえ、親友がいます。隣を見てください。ミリアさんは何も諦めてませんよ。少しずつ、少しずつ、前に進んで行きましょう。大丈夫です、大丈夫ですよ、未来には無限の可能性があるんですから、きっと記憶も取り戻し、よくなるハズです」
「……ありがとう……ございます……」
そう言いながらエメレアはまた泣いた。心では色んな感情が混ざりあっている。
「騎士隊の方へは私から伝えておきましょう。仕事の方もしばらくは病欠にして置きます。事が事なのでギルド騎士の見舞金申請も行っておきます。そんなには出ませんが、独身の女性が普通の暮らしをする分には困りはしないと思います。あ、勿論、ギルドの女子寮はそのまま暮らしていただいて結構ですよ。騎士隊もエメレアさんからの希望がない限り除名は致しません。いつでも復帰してください」
フォルタニアは今後のエメレアの生活面でどうするかを悩んでいたミリアの心配事をテキパキと処理していく。改めてフォルタニアの有能さにミリアは心の中で感服した。
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