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第74話 借竜所



 *


「──じゃあ、ユキマサ君、この〝借竜所(かりゅうじょ)〟で〝空竜(くうりゅう)〟を借りて空からミリアの故郷まで行くよ?」


 俺達は、ギルドから歩いて数分の所にある〝借竜所(かりゅうじょ)〟と言う場所に来ていた。


 この場所には前に見た〝竜車〟を引っ張っていた恐竜みたいな生物が沢山いる。


 言葉通りと言うか、何と言うか、その名の通り〝地竜〟とかを貸し出している所みたいだ。


「空竜? 今朝もチラッとそんな事を言ってたな?」

「うん。これも魔力を持った、()()だよ。あ、この子達もちゃんと〝テイム〟してあるよ」


 なるほど──これは()()では無く、()()って事は、()()があるって事か……

 昨日、クレハに教わっといて正解だったな。


空竜(くうりゅう)地竜(ちりゅう)、後は水竜(すいりゅう)って言う〝魔力〟を持った()()扱いの()()は主に荷車を引いたりとか、移動手段で(もちい)られてるよ」

「水竜なんてのもいるのか?」


 ここには水竜はいないみたいだが、それはここが水辺じゃないからだろうな。


「あと〝空竜〟は()()()()()()()が多くでる所だと、危ないから、あまり使われないけどね? でも、今日行くミリアの故郷はこの〝エルクステン〟から近くて、空を飛べる魔物もあまり出ないし、もし出たとしても、強くは無いから〝空竜〟に乗っていくよ」


 クレハは〝異世界初心者〟である、俺にも分かりやすく説明してくれる。


「な、なんで、クレハはそんな説明口調なの……?」


 何故そんな当たり前の事を説明しているのだろう? と言った表情でエメレアは首を傾げている。


「わ、私はこの子に乗ろうかな。よろしくね!」


 ミリアは既に借りる〝空竜〟を選び〝空竜〟の頭を優しく撫でている。


「ここの〝空竜〟は2人乗りだから、2人ずつで別れて乗ってく形になるかな? その、ゆ、ユキマサ君は私と乗ってね……!」


 そして、何故かクレハは『私と乗ってね』の所で少し顔を赤くしている……


「ん、ああ、よろしく頼むよ」


 まあ、特に気にする事では無いか……と思い、俺は普通に返事を返す。


「く、クレハ、危険よ! この変態と同乗なんて危ないわ! ユキマサの事だから、絶対いやらしい事を()()()()()()()に決まってるわ!」


 いやらしい事を成し遂げてくるって何だよ?


(逆に功績みたいになってるぞ……内容最悪だけど)


 それに何か……エメレアの中での俺への変態としての()が、日に日に上がってる気がするんだが……


「そーいや。エメレア、それで思い出したが──」


 ()()という言葉で、俺は昨日アトラに見せて貰った〝号外記事〟の事を思い出したので、改めて、それをエメレアに問い詰めようと口を開く。


「何よ?」

「〝号外記事〟のインタビューでは、俺の事を『黒い変態』が何たらとか喋ってくれた()()()()が居たらしいな? なぁ、エメレア? お前何か知らないか?」


「あっ……じゃなくて……な、な、何の事かしらぁ?」


 俺は少し睨みながらエメレアの顔を見ていたが、目が合うと、エメレアはサッと素早く目を逸らす。


「『あっ……じゃなくて……』じゃねぇよ! お前、本当に(とぼ)けるの下手くそだな!」

「か、皆目見当(かいもくけんとう)もつかないわ……」


 あ、ちょっと頑張った。


 ……じゃなくて、急にどんな言葉遣いだよ!

 やっぱ(とぼ)けんの下手くそじゃねぇか!


「そ、それに、何で匿名なのに私だって決めつけるのよ! それにもし私だとしても、記者達が、貴方の事を、あまりにしつこくシスティアさんに聞いて来るから、システィアさんが困ってたからじゃない!」


 ちゃんと、理由も添えて惚ける(?)エメレア。


「誰も匿名とは言って無いぞ? でも、後半は初耳だ」


 ()()()()()()とは正にこの事だろう。


「はぁ……もういい……クレハもミリアも待ってるから早く行くぞ?」


 今の話をからすると、どうやら、その記事の記者達は、システィアに俺の事をしつこく聞いていたらしいが……律儀なシスティアは、俺の事をあまり喋らないでくれていたみたいだ。


 実際、システィアの記事には俺の事は『ここら辺では見たこと無い男性』とか『黒い髪でスイセン服を着ていた』みたいな、最低限の事しか書かれていなかった。


 だが、あまりにもしつこく聞いてきた記者に、痺れを切らしたエメレアが……システィアの代わりに匿名で俺の事を話したようだ。


 あのヒュドラの変異種(ヴァルタリス)を倒した所をを実際に見ていたのは、クレハとシスティアとミリアとエメレアの4人だがらな? 記者達からしてみれば、当事者の中の当事者であるエメレアは、信憑性も高く──記事の内容収集には打ってつけの人物だ。


 そして、記者達は俺の話はあまり語りたがらなかったシスティアから、エメレアへと聞き先を変えた。


 その結果。システィアは、しつこい記者の質問攻めから逃れられた事になる。そう考えるとエメレアはシスティアを()()()とも言えるだろう。


 エメレアはシスティア達には物凄く優しいからな。


(まあ、俺の事は色々と変態だのと言ってくれたみたいだが……それでも、まあ、そういう事なら……これに関しては、これ以上は何かを問い詰める気は無くなったな……)


「は、はあ……ちょ、ちょっと、な、何よ、急に!」


 急に話を切り上げた俺に、エメレアは(いぶか)しげな表情を向け「え、もう終わり……?」と呟いている。


「──エメレア、こっち乗れるよ!」


 すると、空竜に乗ったミリアがエメレアを呼ぶ。


「う、うん、分かったわ。すぐ行くわ!」


 ミリアに、そんな風に呼ばれたら、エメレアはもうミリアの元へ行く選択肢しかないのだろう。

 エメレアは直ぐに返事をすると「クレハに変な事したら殺すわよ?」と言い残しミリアの方へ向かう。


「じゃあ、ユキマサ君はこっちね!」


 いつの間にか〝空竜〟を選び終えたらしいクレハが、俺の方に〝空竜〟と一緒に歩いて来る。


「ああ、悪いな──それと、お前もよろしくな?」


 と、俺はミリアがやってたように〝空竜〟の頭を、優しく撫でてみると「グウッ!」と人懐っこい返事が返ってくる。


「あ、この子も気に入ったみたいだね。良かった。じゃあ、取り敢えず乗ってみよっか、ユキマサ君、後ろと前、どっちがいい?」


 見た所は2人乗りの馬に乗る時と同じ感じだな。


「特に希望は無いからクレハに任せるよ」

「じゃあ、私が前でユキマサ君は後ろね……!」


 配置も決まった所で、早速〝空竜〟に乗り込む。


(つーか、本当に飛ぶのか……これ……? いや、飛ぶだろうけどさ? 何となく実感が湧かない……)


「ユキマサ君、落ちないようにちゃんと掴まっててね!」


 そう言われた俺はクレハの腰に軽く手を添える。


 そして、手綱を持ったクレハが手を動かし〝空竜〟に指示を出すと──ぶわ! っとした宙に浮く感覚と共に〝空竜〟がバサリと飛翔する。


「お、飛んだな!」

「そりゃ、まあ、空竜だしね……? ユキマサ君の故郷ではこういうのも無かったの?」


 慣れない〝竜に乗って空を飛ぶ〟という感覚に、気分が高揚する俺にクレハが話しかけて来る。


「飛行機とか、ヘリとか、()()()()()()()はあったが……鉄の塊の中に入って、ガスの噴出やプロペラの回転で飛ぶ感じだから、勝手は全然違うな。少なくともこんな解放感は無かった。ましてや〝竜に乗って自由に空を飛ぶ〟何てのは──それこそ漫画やゲー……いや、本の中で何かの話だな」


 俺は〝漫画やゲーム〟と言おうとしたが、言っても分からないと思うのでやめる。


「飛行機……へリ……? あ、本は私も好きだよ!」


 勿論、クレハは飛行機やヘリと言う言葉を知らないので首を傾げている。まあ、そりゃそうだろうな。


 そんな話をしながら、俺達は〝空竜〟に乗り〝異世界の空〟へと繰り出す──!


 ……まあ、今日の目的は墓参りなんだけどな?

 



 ★★★★★★作者からのお願い★★★★★★


 作品を読んで下さり本当にありがとうございます!


・面白い

・続きが気になる

・異世界が好きだ


 などと少しでも思って下さった方は、画面下の☆☆☆☆☆から評価やブックマークを下さると凄く嬉しいです!

 (また、既に評価、ブックマーク、感想をいただいてる皆様、本当にありがとうございます! 大変、励みになっております!)


 ★5つだと泣いて喜びますが、勿論感じた評価で大丈夫です!


 長々と失礼しました!

 何卒よろしくお願いします!


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