第745話 アーデルハイト王国46
「おい、黒芒、そーいやお前、形状記憶何とかで物を直せるんだよな? 街を直してやってくれないか?」
「ふむ、まあ酒の恩もあるしの。手持ち無沙汰じゃし、他ならぬ主様の頼みじゃ、分かった」
そう言うとスルリと影に変貌し黒芒は街の中心部に向かった。
*
運ばれてきた怪我人はジャンやフィップと比べると大したことなかった。せいぜい骨折がいい所だ。
「アリス様、よくぞご無事で……」
運ばれてきた怪我人の年配の男性がアリスを見て涙を溢している。
「皆のお陰なのです。私は泣いてただけなのですよ。不甲斐ないのです。ジャンもフィップもあんなになるまで戦ってくれたのに」
「いいえ、お気持ちだけで私共は幸せです。この国に生まれて本当によかった」
「治療終わるぞ」
「ああ、貴方がユキマサ様ですね。本当にありがとうございます」
「様なんて要らねぇよ。どういたしまして」
560人の治療を終えるとすっかり夜だ。
バサリと、飛んできたフィップが驚いた顔で国の現状を伝えに来た。
「マジかよ。壊れた建物が全部直ったぞ!? お前もだが〝千妖〟もチートだな。流石は〝幻霊種〟だ」
と、噂をすればだ。黒芒が現れた。
「主様、言われたのは終えたぞ。妾は酒が飲みたい」
「ご苦労さん。酒はもう少しまってな」
「むー、主様は時折、意地悪じゃの」
すっかり日の暮れた空を仰ぐと少し涼しい風が吹いた。
「またお前たちに世話になったのですね」
「アリス、もう大丈夫か?」
「はい、泣き止んだのです」
泣いてないのです! って、突っぱねられるかと思ったが、えらく素直だな。
「さっき、大聖女にことの顛末を連絡したのです。あ、お前の名前も出してしまいましたが、よかったのです?」
「ノアにか? ノアになら問題ねぇよ。何だって、ノアは? 怒っては無かったろう」
「はい、とにかく心配されたのです。そして問題の後始末は〝聖教会〟が行ってくれるそうなのです」
「そうか、ノアに任せとけば心配ないな」
するとフィップが現れた。
「お嬢、ここにいたか。いや、別に用はないけどよ。そうだ用と言えばユキマサ、お前とニールスに金一封だってよ。ちゃんと受けとれよ」
「分かったよ。ありがとな。後、結果、何とかなって良かったな。死人がでなかったのは奇跡だぜ?」
「ああ、もう本当にありがとう……よかったぜ……」
「ユキマサ、お前たちも、もう一泊してくのです」
「悪いな、世話になる」
「もうすぐ食事なのです。行くのですよ!」
少し元気の出てきたアリスに俺はしばし微笑む。
「ああ、俺も腹ペコだ。ご馳走になるぞ」
〝八柱の大結界〟の〝魔術柱〟は後一つとなり、ここから人類はさらに窮地を向かえることになるのだが、それはもう少しだけ先の話しだ。
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