第742話 アーデルハイト王国43
「強ぇのが来たじゃねぇか、俺も混ぜろよ」
動いたのは今まで傍観決め込んでいた愧火だ。
ニールスの背後から刀を振るう。
「やれやれ。動かなければいいものを」
「何か言ったか!!」
「天下一刀流・一式〝桜鴉〟!」
ザン! と、愧火が斬られた。
強い魔力を纏った一撃は星の息吹にも近い威力だ。
「成金上がりの新米魔王に遅れを取るほど私もまだ衰えてはいないぞ」
信じられないものを見たとばかりにフィップは息を呑む。
「大導師、ここは引きたまえ。痛み分けといこうじゃないか。それともどちらかが全滅するまで戦うか? 言っておくが今こちらには私以上の実力者が向かってきてる。無論、私も手加減はしない」
「……いいでしょう。目的は達しました。噂の稗月倖真も見てみたかったですが、少しばかり分が悪いようだ。私も今は本気を出せないのでね。行きますよ、シトリ。愧火様をお運びしなさい」
「御意」
「待て、やられっぱなしで帰れるか! その人間の心臓を食らってやる!」
「いえ、ここは引きます。愧火様、どうかお静まりを。私ならば罰はいかようにも受けさせて貰います」
有無を言わせぬ大導師の言葉に愧火が黙る。
「大導師、なぜキミはそんな若い魔王や魔族にまで仕えるのかが私は甚だ疑問で仕方ないよ。キミのがよほど強かろうに」
大導師からの返事は無い。
愧火、大導師、シトリはシトリの影移動でその場を去っていった。
と、その時だ。
「お前ら、大丈夫か!! 敵は何処だ!」
アリスを肩車したユキマサが現れる。
だが、ニールスとフィップの反応は、
「「遅い」」
中々に冷たいものだった。
「う、悪い……」
「キミもたまには使えないな。ユキマサ。あ、いや、牽制にはなったか。キミの名前も知れ渡って来たな」
呑気なニールスだが、そんなことはどうでもいいとばかりにフィップとジャンに駆け寄るアリスがいた。
「ジャン! フィップ!」
ユキマサの肩から飛び降り心臓が破裂しそうなほど心配するアリス。
「あたしは平気だ。だが、ジャンが……」
「いや待て、息がある。心臓を取られて息があるのは謎だが、生きてりゃ助けられる!」
「本当なのですか! ユキマサ、頼むのです。ジャンを救ってくれなのです!」
「遅刻した、役立たずの汚名はこれで返上しよう。時間がない。直ぐに取りかかるぞ!」
グロテスクなまでのジャンの風穴に俺は手をかざし回復魔法を使う。
だが、変だ。出血が無い。
溢れる筈の血は見えない管を通ってるかのように不自然に綺麗に流れていた。
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