第741話 アーデルハイト王国42
*
「ちっ、昼間にこれを使うのは疲れるんだが仕方ないか」
フィップは空を飛び愧火や大導師たちに言った。
「このあたしは優しくないぜ──」
刹那、爆発的に魔力がフィップに集まる。
その姿を見た大導師が感心したように呟く。
「ほう、これはこれは〝暴走〟ですか」
桃色の髪には輝く金髪が交じり、白目は黒く、赤い瞳は金色の瞳に変化していた。
〝暴走〟──〝吸血鬼〟の中でも現存するのは三名しかいない非常に珍しいものだ。
フィップが大導師に斬りかかる。
そしてそこで初めて大導師が守りの姿勢を取った。
「これはこれは。ウチに欲しいですね」
「誰がなるかよ。魔王信仰なんかに」
ドッバーーンッ!! と、フィップの蹴りが大導師を吹き飛ばす。
少しはダメージあったか? と、フィップは思ったが、大導師は立ち上がる姿勢どころか何もなかったかのように吹き飛ばされた先に立っている。
「さて、この余興にも飽いてきましたね」
「余興だと?」
フィップの声には怒気が混じる。
平和な街を壊され、仲間の心臓を抜かれ、最愛のアリスの笑顔を奪ったことを余興だと言う大導師にフィップは怒り狂い、魔力を纏った大鎌を振った。
*
戦いは熾烈を極めたと思われた。
だが〝暴走〟のフィップを持ってさえも大導師には敵わなかった。
「さて、まずはこの首をへし折りましょうか」
血まみれのフィップの首を掴み抱えあげながら大導師が言った。
「……できるもんなら……やってみろ……ガハッ……」
「では、そうしましょう」
大導師が右手に力を込めようとした時、背後からダンディーな声が響いた。
「いやはや、遅れてすまない。フィップ、息はまだありそうだな」
その人物の登場に意外にも一番驚いたのは大導師だった。
「〝凖勇者〟なぜあなたがここに?」
「……ニールス……」
「アリスはどうした? いや、まずはここを乗りきらねばな。その手を離して貰おうか、大導師」
ふっ、と、笑い、大導師がフィップの首を握る手に力を込めようとした、刹那の時間、ニールスは動いていた。
シュッ、と、大導師の右手が宙を舞う。
ドサリと地面に落ちたフィップは「ゴホッゴホ」と咳をしながら何とか立ち上がる。
ドバドバと大導師の右手から溢れ出る赤い血を見てニールスが息を吐きながら呟く。
「キミにも赤い血が通ってたようで安心したよ。ああ、年齢的にはキミのがずっと上だからキミと呼ぶのは失礼か、まあ、止めはしないが」
流れる血を気にも止めない大導師が軽く手を振ると、まるでマジックのように新しい手が生えて来て元に戻る。そんな大導師をニールスは「キミも随分とチートだな」と呟いた。
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