第740話 アーデルハイト王国41
「これはこれは珍しい。純精霊ですか。リッチというと。まさか、リッチ・ザ・クラウンですか?」
これには大導師も驚く。
純精霊は本当に珍しい。
〝幻霊種〟の次ぐらいに数が少ない。
「何だこの人間は? そうそういないぜ」
「リッチ、お嬢を守って国を出ろ。ユキマサと合流しろ。お前も見ていただろ。あのクルッテルだ」
「あの人間も稀だな。俺っちの存在にも気づいてたしよ。って、オイ、あれはどうする?」
「あれ?」
リッチの視線の先には愧火とシトリがいた。
だが、フィップとアリスの視線はそこではない。
「「ジャン!!」」
心臓を刀で一突きされたジャンが愧火が掲げた右手でゆらゆら揺れている。
「申し訳……ありません……不覚を……ゴフゥッ」
盛大に血を吐くジャン。何故、心臓を一突きされて生きてるかはアリスには分からなかったが、ひとまず生きてることに安堵する。
「心臓をいただくぜ。こいつのは美味そうだ」
ジャンの心臓を抉り取り、真っ赤な心臓を愧火は口に運ぶ。
心臓を抜き去った後のジャンの体は食べ追えた弁当の容器の如くゴミのように地面に投げ捨てた。
「ジャン! ジャン! 返事をするのです!!」
泣き叫ぶアリスだが、ジャンは指を少し動かすだけだ。
「お嬢を連れて行け! リッチ!」
「あいよ、任された。お嬢とはそういう契約だからな。吸血鬼、お前も死ぬなよ」
ボロボロのマントにアリスを包み込みその場を後にするリッチ。
「お前の心臓も美味そうだなぁ?」
「あたしの心臓は高くつくぜ?」
大鎌を構えフィップは臨戦態勢に入った。
*
リッチに揺られながらアリスは泣いていた。
何で、何で、自分の大切な人がこんな目に。
一昨日は誕生日を祝われとても楽しかったのに。
神様、私は何か悪いことをしたのですか?
唐辛子を食べることが、ホウレン草を嫌うことが悪いことなら直すのです。だからどうかどうか私の大切な家族を返してほしいのです。
うわぁぁぁ! と、泣き叫ぶ声も虚しく虚空に消えて行く。
「お嬢、泣いてる場合じゃねぇ。来るぜ」
現れたのは魔王信仰の下っぱ。
下っぱだが数が多い。魔力も使える。
何より、死を恐れない奴等は厄介極まれない。
「お嬢を殺したければ、まずは俺っちを倒すことだな。昼は俺っちも苦手だがやるしかねぇか」
パパパパパン!! と、何かが高速で打ち出された。魔王信仰の者が銃弾か何かだと思い、痛む傷口から取り出したのは、飴だ。丸いキャンディー。
「〝飴弾〟そいつには触れない方が身のためだぜ?」
ヒヒヒと笑う、リッチの声が街に響いた。
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