第739話 アーデルハイト王国40
「勿論、アリス・アーデルハイトの抹殺ですよ」
ゾクッとフィップとアリスの背中に悪寒が走った。いや、悪寒なんて可愛いものではない。
淡々とした言葉だが、一言一言に重みがあり、まるで死神とでも話してるかのようだ。
(あたしがコイツを相手にしてる間にお嬢を逃がせるか……いや、無理だ。外は魔物も出る……リッチも昼間じゃ全力は出せない)
「〝魔術柱〟を渡せば見逃してくれるか?」
「取引ですか?」
「ああ、頼む。後生だ」
「待つのです。フィップ!」
「お嬢ダメだ。こいつは格が違う。千年以上前から魔王信仰のトップに蔓延る。化物だ」
冷や汗が止まらない。
アリスの声も震えている。
「ははは、いいでしょう。その取引に応じます」
「本当か!!」
「ええ、私は嘘は吐きません」
嘘を吐かないって言うのが嘘の可能性もあるが、今は信じるしかない。
「お嬢〝魔術柱〟を出せ」
「人類の生命線なのですよ!? 本気なのですか?」
「あたしは他の人類よりお嬢一人のが大事だ」
「……ッ!!」
「ウチの〝魔術柱〟が壊されてもまだ〝中央連合王国アルカディア〟がある。大丈夫だ、何とかなる」
傷が痛むフィップの声はいつもより弱々しい。
「分かったのです。私はもう他の人類に顔向けできませんね。大導師、約束は守るのですよ」
「いいでしょう。では〝魔術柱〟を」
大導師の肯定の返事を聞いてアリスは自身の〝アイテムストレージ〟から〝魔術柱〟を取り出す。
「結構」
その一言と共に大導師は大きな御神木サイズの〝魔術柱〟を片手を振るうだけで粉々に破壊する。
「お嬢、ズラかるぞ。ここに長居は無用だ。早くユキマサと合流を」
「分かったのです……」
アリスは罪悪感でいっぱいだった。結果、自分の命惜しさに人類を裏切ったような物だと感じたから。
「待ちなさい。何処へ行くのですか? 私が逃がすと約束したのはそこの小さいのだけですよ?」
その言葉を聞いてアリスは絶句した。
「そういうことかよ?」
「何も約束は破ってませんよ。貴女を逃がすとは言っていない〝桃色の鬼〟フィップ・テルロズ」
「待つのです! どういうことなのですか!?」
「お嬢、ここで一旦お別れだ。オイ、リッチ、聞こえてんだろ? 出てこいよ」
アリスの熊のぬいぐるみにフィップが問いかけると熊のぬいぐるみから、スゥっとオレンジ色のカボチャ頭にボロいマントを纏った細い胴体、足は見当たらない。元から無いようだ。
そんな何処かハロウィンチックな奴が出て来て軽口を叩く。
「おうおう、吸血鬼、お前が俺っちを呼ぶなんて珍しいな。っと、とんでもない事になってるみたいだぜ」
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