第738話 アーデルハイト王国39
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ジャンは魔王愧火とシトリ相手に激戦を繰り広げた。
少しずつでいいダメージを与えるんだ。一秒でも長く時間を稼ぐんだ。と、己に言い聞かせた。
愧火の落とす小さめだが威力は勿論高い隕石を斬り、シトリの影移動を使った奇襲に対処し、己の出来ることを全うした。
……だが、何かがおかしい。
愧火がアリスを追う様子が見られないのだ。
ジャンとの戦いに不適な笑みを浮かべているが……ただの戦闘狂と片付けるには少し無理がある。
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〝アーデルハイト王国〟街中
火の手が上がる街中をアリスを抱えたフィップが走っていた。
飛んだ方が速いが敵に見つかるリスクが高い。街中を走った方がいくばか安全だとフィップは判断した。
「フィップ! 待つのです!」
「だから待てねぇって!」
「あそこに瓦礫に埋もれてる国民がいるのです! 早く助けるのです!」
もぞもぞ、とりゃ! っと、フィップの手から抜け出したアリスは優しそうな中年男性に駆け寄る。
「大丈夫なのですか!? 今助けるのです!」
アリスは小さな身体で瓦礫をどかそうとする。
「あぁ……アリス様、私は大丈夫ですから今すぐお逃げ下さい」
「私は王女なのです! 怪我をしてる国民をほっといて逃げるなんて許されないのです!」
「退け、お嬢」
ヒュンーと、フィップが片手を振るうと瓦礫が吹き飛ぶ。そしてポーションを掛けながらフィップが言う。
「お嬢、時間が無いんだ、気持ちは分かる。だが、今は自分の命を優先してくれ。頼む、人類の存続がお嬢にはかかってる」
「国民一人助けられないで何が人類を救えるのですか……」
「耳がいたいぜ。兵士共、悪いが国民の救助にあたってくれ。逃げたい奴は逃げていい。罰は与えない」
この環境下で国民の救助を命じられたが、逃げる兵士は誰一人と居なかった。
*
「フィップ、国の皆が……兵士達が……」
「やわな鍛え方はしてない。信じろ。もうすぐ国外だ。魔物も出る。気を引き締めろ」
そう、フィップが言った瞬間だ。
フィップの横腹が切り裂かれた。
「ぐっ……」
浅くない傷に声を漏らすフィップ。
「おや、その小さいのを狙ったつもりでしたが避けられましたか?」
「誰……だ……ッ!?」
紫がかった黒い髪に白と黒の和服。
20代後半に見える男がそこに立っていた。
フィップはこの男を知っている。
〝魔王信仰〟の、No.1、トップに君臨するこの、人物は通称、大導師。
「大導師……マジもんかよ。人類で最も高い懸賞金が懸けられた男がこんな所になんのようだよ?」
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