第736話 アーデルハイト王国37
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ジャン・ウィリアムは孤児だった。
餓死寸前の所でフィップと出会ってなかったら、間違いなく死んでいただろう。
『おい、瀕死小僧、お前、あたしと来るか?』
今でもジャンは小汚ないただの瀕死の子供だった自分に手を差し述べてくれたフィップの姿を覚えてる。
フィップの推薦で雑用として王宮に入ったジャンは、いつの間にかフィップをフィップ先輩と呼ぶようになり、いくばかの時が過ぎた。
『僕は小僧じゃありません。ジャン・ウィリアムです』
『あたしから見ればお前なんて小僧だ。小僧と呼ばれたくなければ、あたしにお前を認めさせるんだな』
『分かりました。僕を鍛えて下さい。絶対に強くなってフィップ先輩に認めて貰えるようになります!』
『あたしが鍛えるのかよ。ったく、面倒だな』
フィップがいくらスパルタ教育をしても、ジャンは泣き言も愚痴も一切溢さなかった。
数年後、雑用から執事になり、そのまた数年後執事長まで上り詰めたのは異例の話しである。
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「……分かった。死ぬなよ。頼んだぞ、ジャン」
男の覚悟を、意地を、信念を、汲み取ったフィップはジャンの名前を呼んだ。
「……初めて名前で呼んで下さりましたな」
「そうだな。瀕死の小僧が、よくここまで成長したもんだ。少しふけすぎたがな。兵士も連れてくぞ。あいつらじゃ死体が増えるだけだからな」
「待つのです! 何を勝手に話を進めてるのですか! ジャン、お前も逃げるのです! ユキマサが来ればあんな奴等コテンパンにしてくれるのです!」
「お嬢、男の覚悟は無視するもんじゃねぇ」
「これは命令なのです!」
「その命令は却下する。後であたしをクビにでもすればいい。行くぞ、逃げるぞ、お嬢!」
ごねるアリスを担ぎフィップは走る。
「ジャン、命令なのです! 必ず生き残るのです!」
「御意に、アリスお嬢様」
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「クソ、街も被害がでかいな」
落雷のせいで街に火が燃え盛っている。
「つーか、ユキマサに連絡を、あたしはバカか、一秒でも早くあいつを呼ばなければ」
フィップは通信石を取り出し10-2の番号に連絡をかける。プルルル、プルルルと3コール目で繋がった。
『1日振りだな、どうした? 何かあったか?』
「ユキマサ、良かった。出てくれたな。今何処にいる? 助けてくれ、魔王愧火が攻めてきた!」
『何だと!? クソ、今は〝ユグドラシル〟の近くだ。全力で行っても時間がかかるぞ!』
「それでもいい。頼む、来てくれ。お嬢を、ジャンをあたしは絶対に失いたくない……」
『分かった。一秒でも早く向かう。いいか、それまで死ぬなよ。死ななきゃ大怪我ぐらいなら治してやる』
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