第732話 アーデルハイト王国33
*
ジャンが飲んだのも唐辛子ウォッカだった。
これ通例なの? 凄い身体ポカポカするんだけど。
「オイ、クルッテル?」
「何だ?」
「お前、老いぼれ小僧に何かしたか?」
うーん。肺癌を治したことぐらいしかしてない。
「別に特別なことをした記憶は無いぞ」
「嘘吐くなよ。一晩でこんなに元気になるか!」
「あー、癌のことか?」
「癌? 老いぼれ小僧の病気だよ。治したんだろ?」
「それなら俺だ」
あ、何だ。そのことか。
てか、よく見てるなー。
「噂にゃ聞いてたが、お前ホントにクルッテルな?」
「ははは、主様を甘く見るでないぞ。フィップ」
「あの〝千妖〟にここまで言わせるしよ」
酔って来てるらしいフィップがそれでも酒をグビッ呷り「おかわりだ」と、近くのメイドに伝える。
「なぁ、クルッテル?」
少し落ち着いたトーンでフィップが口を開いた。
「あたしに万が一のことがあればお嬢を頼んでいいか?」
意識は俺に、視線は酒に向いていた。
「らしくねぇな。何か悪い所でもあるなら治すが?」
「いや、そうじゃねぇんだ。新しい魔王愧火が生まれ、これから魔王との戦いはきっと激化する。お嬢の持つ〝魔術柱〟も絶対安心というワケじゃない」
この吸血鬼さえ、今の情勢は不穏なのだろう。
「話は分かったけどよ。まあ、心配すんな。俺はアリスの味方だ」
「助かる。っと、にしてもだ〝千妖〟然り、桜といい、お前またとんでもなく美人で可愛い子を連れてるな。このムッツリめ」
ん? 何か話が凄く飛んだぞ。フィップ的には話題を逸らしたんだろうが、なんつー話題だ!
「二人とも飛んでもなく美人で可愛いのは認めるが、たまたまだぞ! 変な誤解はよせ」
「まあ、そういう事にしといてやるよ。これ借しな」
「何で勝手に借しになってんだよ。酔いどれ吸血鬼」
「フィップ先輩、借りは我々のが大きいのでは?」
「うるせー! 今のあたしはお嬢のプレゼントで負けて傷心中なんだよ! あ、おい、老いぼれ小僧、コロッケ食ってねぇで聞け! 無視すんな」
「好きなのか? コロッケ」
「はい、コロッケは私の人生の支えでございます」
そんなやり取りに場が少し和む。
こんな楽しい夜は朝方までずっと続いた。
語り、飲み、食い、時に笑って、時に真剣に、そんな仲間との、かけがえの無い時間を俺はちゃんと歩めているだろうか。
あー、ダメだ。少し酔って来たな。
黒芒とフィップに合わせてたら身体が持たんな。
朝方、クレハに肩を借りるハメになりながらも寝室へ戻り俺は心地のよい酔いの中で就寝についた。
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