第730話 アーデルハイト王国31
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劇は意外と好評だった。
20分程度の劇だが、唐辛子君が急に剣に目覚めたり、砂糖を食べて悶絶するという謎ハプニングもあったが、唐辛子君は無事魔王を倒した。
にしても、この国は唐辛子を推しすぎだと思う。
「中々の劇だったのです」
「おい、何で魔王あたしに似てんだよ?」
劇中で登場した魔王はフィップそっくりというか、最早フィップだった。桃髪サイドテールだし、使ってる武器も大鎌だったし。
「フィップ、いいではありませんか。所詮は劇ものなのです。楽しむのが目的なのです。あ、料理が来たのです」
「……まあ、お嬢がそう言うなら」
並べられたのは豪華絢爛の食事だった。
大きな伊勢海老のような海老のお作りに、豚の頭から丸々焼かれた空豚の丸焼き、生魚の刺身もこれでもかとあるな? 海は近いのか?
勿論、唐辛子も沢山現れた。
「皆、料理は行き渡りましたね。では、いただきますなのです!」
今日の主役のアリスが乾杯の音頭を取り、俺たちは食事を始める。
「お嬢様、こちら例の物です」
例の物? 何だそりゃ? 料理長のゴンザが秘密裏に運んでいたのは、
辛イカじゃん! 俺があげた奴。
「うっひゃぁ! これなのですよ!」
頬擦りするかの如く辛イカに喜ぶアリス。
ゴスロリ幼女にイカ……似合わねぇ。
アリスは目をキラキラさせて辛イカを食べる。
「お……」
「「「「「お?」」」」」
「美味しいのです♪ 何ですか、この絶妙な辛さは! いつもならもう少し辛い方が好みな筈なのにこのイカに関してはこの辛さが心地よいのです♪」
あー、あるよな。丁度いい絶妙な味って。それをまさか異世界のイカ食ってゴスロリ幼女が言うとはな。
その後も楽しい時間は続いた。
気づけば時間は日を跨ごうとしていた。
「あ、日付変わっちゃう! 桜ちゃん」
「はい、ここにあります!」
パタパタとクレハと桜が慌て出した。
二人は小さな包みをアリスに持っていった。
「アリスちゃん、これ私たちから。気持ちだけだけど受け取って!」
「ッ!? 私にですか? 気を使わなくていいと申した筈ですのに……開けてもいいのです?」
うん! と、二人は頷いた。
入っていたのは、ハンカチ。
黒いハンカチだ。
ゴスロリのアリスにはピッタリの一品だ。
「ハンカチは私で、唐辛子のマークは桜ちゃんが縫ったんだ」
ここからは見えないが、どうやらハンカチには唐辛子の刺繍が縫われてるらしい。
「ありがとうなのです! 大切にするのですよ!」
花が咲くようにアリスは笑った。その笑顔を見てクレハと桜もホッとしたように、でも嬉しそうに笑った。
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