第696話 魔女の家38
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「あっという間の時間だったけど楽しかったわ」
リリリが杖を一振りすると、森の木々が大樽に変わった。それを十樽もらい水を汲み、酒と合わせて十六樽ほど〝アイテムストレージ〟に仕舞う。
「ああ、こちらこそ世話になったな。って、オイ、黒芒、お前も出てこい。リリリに挨拶しろ!」
礼をいいながら俺の影の中で寝てる黒芒を起こす。ごねるかなー。とも、思ったが杞憂だったらしく、黒芒はひょっこりと影から顔を出した。
「そうか、もう行くのか。もう一二晩共に飲みたかったんじゃがの」
「また来れば良いさ。そういう約束だからな」
「うむ、そうじゃの。また来るぞ、リリリ」
クレハと桜も「ありがとうございました!」「楽しかったです!」と、リリリと軽くハグして一時の別れを惜しんでいる。
「私は湧き水でも飲みながらあなたたちの来訪をいつまでもここで待つわ。魔王退治、頑張りなさいね」
「おう、魔族も片付けなくちゃイケないみたいだし。サイハテとか言ったか、要注意リストに入れとくよ」
「ニールスさんがああ言うなんてよっぽどだよね」
「私も怖いけど絶対何かの役に立ってみせます!」
「いや、桜、危険を感じたらすぐ逃げろよ?」
桜はこう、離れた場所で安全にサポートしてほしいんだがな。まあ〝魔王戦争〟になればそうは行かないか。
つーか、ガリアペスト戦は奇跡なまでに人が集まってたよな……
〝聖教会〟からは〝大聖女〟ノアと〝聖女〟ジューリア。
〝ギルド騎士〟からは騎士隊長が六名
後は〝領主〟ガーロックに拳の拳聖
そして〝旧六魔導士〟から〝剣斎〟〝霧裂〟〝独軍〟
後、我ながら異世界から俺。親父、俺頑張ったよ!
残りの魔王は今は黒芒もいるし意外とヌルゲーじゃねぇか? と、思ったりもするが、斑の協力はもう期待できそう無いし、目下の最大驚異は件のイヴリスか……
あのニールスが惨敗ってことは最低でも実力は多分最低でもノアと同等かそれ以上だな。
「改めて世話になった。またな、リリリ」
「ええ、また逢いましょ。ユキマサ」
その言葉と同時に千年桜の桜の花弁が大きく舞った。
まるで手を振ってくれてるかのように枝を揺らしながら。
リリリが杖を振り結界を開けてくれて、俺たちは素敵な魔女の家を後にする。
クレハと桜は最後まで手を振っていた。
そう言えば、ふと、昔に聞いた話を思い出した。
桜の木の下には死体が埋まっていると。
まあ、聞かぬが花って奴だな。
そんなことを考えながら俺はクレハに尋ねた。
「クレハ、次の街はどこだ? 毎回毎回ナビ的に頼っちまって悪いな」
「ううん、気にしないで。次はこっちの道から行くと……あ、ユキマサ君に良い所かも!」
「俺に良い所? どこだよ?」
「えーとね。次の街は〝アーデルハイト王国〟だよ」
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