第694話 魔女の家36
*
つーん。
(?)
つーん。つん。
(……?)
つーん。つーん。つん。
(何だ……)
優しい刺激と共に俺が目を覚ますと。
「あ、起きた。ユキマサ君、もうお昼過ぎだよー」
俺の頬を人差し指で優しく襲撃するムスり顔のクレハと目があった。
て、もう昼か。寝すぎたな。
いや、寝たの朝だから寝たりんけど。
「ああ、おはよう。クレハ、桜はどうした?」
「桜ちゃんはリリリさんのお家でお昼ごはん作ってくれてる。それにしてもユキマサ君、黒芒さんと随分仲良しなんだね」
ん? ああ、左半身が柔ら温かい。
黒芒が俺に抱き付いて寝ている。こいつの寝顔、明るい所で初めて見たが、やはり超美人だな。
「あーうん。これは、そう。仲良し、仲良しなんだ」
ナカヨシ良し! 平和万歳! 和食最高!
「ふーん。まあ、いいけど。黒芒さんはお昼は?」
「おい、黒芒、昼飯どうするかって?」
ゆさゆさと黒芒を起こし、昼食の確認を取るが……
「まだ昼じゃないかの。妾は寝る。主様も寝ろ」
「あ、おい。また抱き付くな。俺は起きるの!」
異世界に来て、昼夜逆転の生活は避けたい。
魔王ですら、昼間に攻めてきたからな。
あいつら寝るのか知らないけど。
駄々をこねる黒芒を何とか影の中に押し込み。
「悪い、お待たせ。黒芒は寝るってよ」
「うん、了解、桜ちゃんに伝えるね」
と、クレハが手を自分の耳にやるので「何やってんだ?」と、頭を巡らすと、あ〝精神疎通〟か。
エルフ以外にも出来ると言う桜の便利能力。
「じゃあ、四人で食べようだって。リリリさんはもう起きてるよ。約束のお酒作ってくれてたみたいだよ」
「あいつもう起きてるのか? 俺もまだ眠いのに、タフだなー。約束の酒か、礼は、リリリの家にまた来て旅の話でいいんだっけか?」
*
「あ、ユキマサさん。おはようございます♪」
リリリの家にお邪魔した俺はエプロン姿の桜に挨拶をされる。朝エプロンは嫁力高いな。スゴいぞ桜。
もう昼だけど。そこは突っ込まない方向で。
テーブルに着いていたリリリは酔い醒ましか水を飲んでいる。あれだけ飲めば二日酔いでもおかしくないが、本人は二日酔いの様子はなく、
「あら、ユキマサ、おはよう。もっと寝てるかと思ったわ」
と、変わらぬ笑顔を見せる。これは酔い醒ましとかじゃなくて普通に水飲んでただけだな。
ここの水は名水だから超美味いし。
ハッ! しまった。この水で米を炊けばよかった。
多分、めちゃめちゃ美味いぞ!
ちなみに米を研ぐ前の一番最初の水を一番良い水を使うのがベストだ。なんせ、最初の水を一番多く米は吸うからな。
炊く時の水より、研ぐ最初の水が一番肝心なんだ。
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