第693話 魔女の家35
〝酒は百薬の長〟とは、よく言ったもんだよ。
でも、飲みすぎは体にガンだよな。
そんな所まで自動調整してくれるのね〝状態異常耐性(極)〟……あれ? でも、親父は泥酔してたけどな? 人によって適量はやはり違うのか?
スリスリ、スリスリ。
(……)
スリスリ。スリスリ。
(…………)
スリスリ。スリスリ。
「おい、黒芒、お前は猫か!」
「妾を猫呼ばわりとは流石は主様じゃの」
猫と呼ばれるのが嫌だったのか、気が済んだのかは知らないが、その後、今日は黒芒はスリスリはして来なくなった。良くか悪くかだなー。
「のう、主様、明日は何をしようかの?」
最早抱きつくどころか寝てる俺の上に覆い被さるようにくっつく黒芒が遠足でも行く前日かのようなテンションで問いかけてくる。
「そうだな。少し早いかもだが、明日か明後日には次の街を目指すか。次はどんな街だろうな」
「千年経てば都も変わる。千年前にはあちらこちらをアテも無くさ迷うようにブラついたが。主様との旅は心が踊る。どこ迄も付き合うぞ、主様」
黒芒のせいで血流が良くなって酔いがまた少し回ってきたな。でも、気持ちのいい酔い方だ。
「黒芒、俺は寝るぞ。お前も休め〝幻霊種〟も睡眠は必要なんだろ?」
「妾は取るが〝幻霊種〟の中には睡眠を取らぬ者もおる。人間の物差しでは〝幻霊種〟は計れぬものよ」
「みたいだな。でも、星から生まれるなんてスゴいなカッコいいじゃねぇか」
「カッコよいか、じゃとよいが。じゃが、妾は星ではなく人のような母親から生まれてみたかった。星から生まれるゆえに〝幻霊種〟は家族の無い者が殆どじゃ。妾はちとそれが寂しくての。種続柄妾たちは強者を好む性質らしいが〝幻霊種〟は皆星の力を何処かしらに授かっておる。だから〝幻霊種〟を超える強さの者は中々おらぬので恋などもまずできん」
「〝幻霊種〟同士で付き合ったりはないのか? 別に人に固持する理由もないだろ?」
「理論上は可能じゃが、現実的では無いの。主様よ〝幻霊種〟とは、この世で最も少ない人類。いくら長寿でも同時期に十名も居ないのではないかの。しかも〝幻霊種〟は男性と女性。そして無性にが存在する。そして生まれてくる者の八割が女性、男性一割、無性が一割と言った所じゃ。そんな少ない数の〝幻霊種〟の男性に妾が惚れる可能性がどれほどあると思う?」
「……限りなくゼロに近いとだけ」
「じゃろうな、しかも妾は〝幻霊種〟の中でも最上級じゃからの」
ズリズリと少し黒芒はズレ、俺の上に覆い被さるような状態から、左サイドから俺に抱き付く形になる。
「じゃから、主様との出会いは妾に取ってはこれ以上にない最高の出会いじゃ」
長生きしてくりゃれ。と、言うと黒芒は俺に抱き付いたままスヤスヤと寝息を立て始めた。
──おやすみ、黒芒。
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