第688話 魔女の家30
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しばしニールスはうどんに感嘆していた。
何でも、前世の母親の味にそっくりらしい。
昭和の味噌煮込みうどんに近いって言うのは、クレハたちが懐かしい味をだしたのか、それまたニールスの日本での母親が食の最先端を突っ走って行っていたのかは多分これからもずっと謎だろう。
あまりにも感嘆してたので二つの鍋に一つずつしかないありがたーい温玉をニールスに譲ってやった。
「美味い……もう少し貰ってもいいだろうか?」
「はい、勿論ですよ!」
染みるように食べるニールスにクレハがおかわりを装う。俺とニールスで土鍋一杯、黒芒とリリリで土鍋一杯の配分だが、俺の分は残りそうに無いな。
クレハにも俺の分は気にしなくてイイからニールスに食わせてやれと言ってある。配分のことは味に感動し過ぎて、そこまでニールスは頭が回って無い様子だ。酒も結構飲んでたしな。
「主様よ。妾たちは温玉は半分ずつ貰うぞ」
「ん、おお、仲良くなー」
黒芒とリリリは仲良く温玉を分けあっている。
「す、すまん、ユキマサ。私としたことが我を忘れて食べ進んでしまった! ああ……うどんも残りが……」
今日イチで慌てるニールス。
てか、魔王とか魔族の話よりもうどんの話のが焦ってるってどうなの? 魔王もうどんあげたら野望諦めて、めでたしめでたしってならないかな。
「いいよ。全部食っちまいな。懐かしくて美味しかったんだろ? なら、いいさ。堪能しな」
「イイのか……?」
「ま、俺はクレハと桜に頼めばまた食べられるしな」
へへへ、いーだろー! と、べー、と子供のように舌を出す俺はちょっとガキ過ぎかな。
「優しいのだな。キミは。では、ありがたくいただこう」
そう言ってニールスは味噌煮込みうどんを綺麗に平らげた。
「ご馳走さま。クレハお嬢ちゃんと桜お嬢ちゃん。本当にありがとう。涙がでそうだ」
いやいや、泣いてますよニールスさん?
「そう言えばユキマサ。第二次世界大戦はどうなったのだ? あの戦況だ。日本は勝ったのだろう?」
「……何を言ってやがる。日本は負けた。正直あの戦争は日本の勝利は絶望的だったろ」
「何だと!? そんなバカな……強力な爆弾こそ落とされはしたが、勝利は固かった筈だ!」
本当に何を言ってるんだ?
日本が戦争で勝てるワケが無いだろ。
ふと、思い立った俺はニールスと、その時期の総理大臣の名前と、聞くか迷ったが強力な爆弾の落とされた都道府県の名前を言い合った。
結果を言うと、総理大臣の名前も強力な爆弾の落とされた都道府県も、俺とニールスの答えは全く違った。
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