第67話 魔物と動物
「──といっても、どこから話したものか……」
「えーと、じゃあ、どんな感じの人だったの?」
悩む俺にクレハが質問して来てくれる。
(これは助かる、質問形式のが話しやすいしな)
「糞爺は今は置いとくして……婆ちゃんや、親父や母さんはみんな優しい人だったよ──俺の両親が亡くなったのは、今から8年前だ。俺が8時の頃に山の事故で亡くなった」
その話しを、クレハは神妙な顔で聞いている。
「そして、それからすぐに糞爺と婆ちゃんが出ていった。何処に行ったかは知らないし、出ていく時には糞爺は『わしを恨んでいい、この糞爺をな──』とか言って、俺を50mぐらい蹴り飛ばして出ていったよ」
ちなみにそれ以来、俺は糞爺を糞爺と呼んでいる。
「え、お爺さんとお婆さんは何で出ていったの!? というか、何でユキマサ君は蹴り飛ばされたの!?」
「さあな? でも、婆ちゃんは生まれつき体も弱くて病気もあってな? 8年前の時点で厳しい状態だったから、海外の大きな病院にでも連れてったんじゃないか? 元気ならいいが、後、蹴られた理由は知らん」
蹴りに関しては、本当に謎しか残ってない。
(あの、糞爺め……)
「そ……そうなんだ……」
「他に変わった事だと──糞爺も婆ちゃんも、親父も母さんも、一定の年になると老けなくなって、見た目は20代半ばぐらいで若かったとかか?」
「え、な、何それ……!?」
「さあな、どういうわけか……糞爺と親父は、恐らくこの世界で言う──〝魔力〟や〝スキル〟みたいな物を持ってたのかもな。ただ単に特殊な血筋かもしれんが、とにかく糞爺と親父は25~30歳ぐらいから老けなくなったとか言ってた」
(だから、糞爺と街を歩いてると、孫では無く……必ず息子か、年の離れた兄弟に間違われるんだよな……)
「あれ……でも、それだとお爺さんやお父さんはともかく、ユキマサ君のお婆ちゃんとお母さんは〝魔力〟や〝スキル〟を確実に持ってない人だったってことだよね? それなのに老けなかったの?」
「……そうだな。まあ〝元いた世界〟では、母さん達みたいに〝魔力〟や〝スキル〟が無いのが普通なんだけどな? 婆ちゃんや母さんが老けなかったのは、ちょっとした理由はあるんだが……悪い、今は言えない」
(母さんや婆ちゃんも、見た目は20代にしか見えなかったからな……婆ちゃんに至っては、本当の歳を言って、身分証まで見せても、信じてくれる人は少なかったしな。初対面で信じたのは理沙ぐらいだ)
「あ、あれ……ダメなの? ちょっと興味あったんだけど……口止めされてるとか?」
「まあ、そんな所だな」
──昔、酔った親父が口を滑らせたんだが……
翌日、こっぴどく母さんに怒られたらしい親父が、手と額を地面に擦り付けながら『頼むから黙っててくれ』と切実に言ってたからな。
別にクレハになら話してもいいと思うんだが……何て言うか、少しアレな内容も含んでいるので……
今、この場で説明するのは止めておきたい。
「つーか、この世界なら不老みたいなのは別に珍しく無いだろ? 吸血鬼のフィップも、あの姿で歳は300越えとか聞いたぞ?」
あいつも20代ぐらいにしか見えなかったしな。
「そうだね。吸血鬼とかエルフの人達は種族的にも長寿だし、老化現象に関しても、あまり気にしてる人は少ないかな?」
そう考えると、エメレアやフォルタニアは、エルフの中だとかなり若い部類なんだな。
「確かにフィップも歳とか別に気にして無かった感じだったな──あ、それと、今日ちょっと気になった事があったんだが、聞いてもいいか?」
ふと、俺は今の種族とかで思いだした疑問を、クレハに聞いてみていいか確認を取る。
「あ、うん。何?」
「魔物と動物の違いって何だ?」
俺は今日、アトラが〝水仙鳩〟と言う〝魔力〟を持った動物を見た時に思った疑問を質問する。
異世界に来たばかりの俺は〝大猪〟とかの体験から
・魔力を持ち死んだらその場で消えるのが魔物
・魔力を持たず死んでも消えず死体が残るのが動物
なのでは無いかと、思っていたのだが……
今日の〝魔力〟を持った鳩の出現で、その考えが間違いだと気付かされた。
「そっか。魔力が無かったユキマサ君の居た世界だと、そういう所も違う事になるんだね?」
(やはりこれもこの異世界では一般常識なのか……)
クレハには、異世界から来た事を話してあるので『そうなんだ』ぐらいで済んだが……
他の奴等に聞いてたら、また俺は〝異世界の常識地雷〟を踏み『この人、頭大丈夫?』みたいな感じで可哀想な人を見る、ドン引いた目で見られてる所だったな。
「魔物や魔獣と動物の違いはね、大きく分けて2つあるんだ──
1つは魔物と魔獣は死ぬとその場で消えて確率で〝ドロップアイテム〟がドロップするの。
でも、動物は死んでも死体は消えずに残って、動物からは〝ドロップアイテム〟がドロップする事は無いんだ。
……えーと、ここまでは分かる?」
ここまでは何となく思ってた通りみたいだ。
「ああ、最初は驚いたがな?」
「うん。じゃあ、次ね、2つ目は心臓が有るか無いかだよ。動物には心臓があるけど──魔物や魔獣には心臓が無いんだ」
「は……? 心臓が無い? じゃあ、どうやって動いてんだ……魔物だって斬ったら血も出たぞ?」
「〝魔力〟だよ。魔物や魔獣は〝魔力〟で動いてるの。まあ、食事を取る魔物もいるみたいだけどね? ギルドにも、畑や家畜を荒らす魔物の退治依頼とか結構あったりするよ?」
「でも、例えはクラゲとか、元々心臓の無い生き物とかもいるだろ? それはどういう扱いになるんだ?」
まあ、この世界にクラゲがいるかは知らんが、
パッと思い浮かんだ疑問をついでに聞いてみる。
「そういう時は1つ目の違いで判断する感じだよ。基本的にそういう時は、死んだ時にその場で死体が消えるか消えないかで判断する事になるよ。魔物と魔獣のこれだけは絶対だから。まあ、クラゲとかの場合は稀な特例みたいな感じで考えていいと思うよ?」
「そういう事か……やっと理解したよ」
何となくこの世界の仕組みがわかってきたな。
あと、クラゲもいるんだな。
どうでもいいけど。
アルテナの言うとおり、この〝異世界〟は〝元いた世界〟とは全く別の構造で成り立ってるみたいだ。
「どういたしまして、またいつでも聞いてね?」
「ああ、助かる」
話しも一区切り付いたので『そろそろ寝るか?』みたいな感じになったのだが……
──その後も、何だかんだで俺とクレハは、この後2時間ぐらい、他愛もない話を話し込んでしまい、気付くと……いつの間にか、お互い寝落ちしまう。
(……やっぱ、温かいな……)
もう半分ぐらい寝ている、微睡みの中で、意識が遠退く最中……俺は頭の中で、そんな事を思いながら眠りに落ち──〝異世界〟3日目の日が終わるのだった。
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