第676話 魔女の家18
「あ、あの、ニールスさんて、あの貴族のアスプレイ家のご出身ですよね?」
恐る恐るにクレハがニールスに質問する。
「ああ、アスプレイ家は私の実家だ。若い頃に気の乗らない縁談の話がきて飛び出してしまったがね」
え、おい、こいつ。
異世界転生で貴族に転生したのかよ!
だからラノベか! どんだけ主人公体質だよ!
「いいのかよ。実家、破門されたりしてないのか? まあ、俺も気の乗らない縁談来たら逃げるけど」
「私は三男でね。兄二人と姉一人が上手くやってくれたお陰で最後まで両親とは仲は良かった方だよ」
「そりゃ良かった。知り合いにゴミと政略結婚させられそうになって母親ともあまり上手くいってない奴がいてな。少し心配になったんだ」
嫌だよな。政略結婚。恋は自由がいいよ。
生憎、恋はまだ未経験だが、親父がそう言ってた。
「フォルタニア・シルフディートだな」
「よく知ってるな。調べたのか?」
「少し昔のコネを使ってキミの事はよく調べさせてもらった。例えばキミの回復魔法のこととかもな?」
一瞬だけ、食べる手を止め、直ぐにまたナイフで切った肉にかぶりつくニールス。
「何だ、誰か何か治して欲しいのか?」
「治して欲しい人はいるがキミには治せない」
「風邪と生ま──」
「──れつきの病気以外は治せる。違うか?」
「……」
「私には嫁がいてな。付き合いも72年になる。生まれつき体が弱く、多分もう長くはない」
ダメだ。生まれつきのものは治せない。
気づくと皆手が止まっていた。
やべ、空気悪くしちまったか……
「そんな顔をするでない。ほら皆こんな美味しい物は中々食べられんぞ。冷めない内に食べようじゃないか。それに私は嬉しいのだ、この歳まで思い人と共にいれて。子も成すことも叶わなかったが、それでも私は生涯で最高の相手と最高の恋をした。これほど嬉しいことは他に無い、もう一度言う、私は嬉しいのだ」
ハハハと、高らかに笑うニールス。
この顔は無理に作った顔じゃない。本心だ。
「素敵です」
桜がポツリと本音を溢した。
「そうか、クロエスとの約束を果たせなかった理由はそれだな? お前、死ぬのが怖くなったんだろ?」
責める言い方では無く俺はテレビのクイズ番組の問題に答えるかのようにあっけらかんと自然に言った。
誰だって死ぬのは怖い。
でも、大切な人を残して死ぬのはもっと怖い。
そう考えると親父はスゴいな。
母さんと同じに二人で死んだんだもんな。
「そうだ。私は怖くなった。嫁を残して死ぬのが怖くて怖くて、命が惜しくて仕方がなかったのだ」
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