第663話 魔女の家5
「黒芒……え、黒芒!?」
え? え? と、今まで落ち着いた態度だったいろはの魔女が初めて狼狽を見せる。見ると、紫の瞳を真ん丸に見開いて──
「──く、黒芒っ♪」
思いっきり黒芒に抱きついた。生き別れの姉妹にでも会ったかのような喜びかたで。
てか、リリリって名前なのね。いろはの魔女。
「貴女、一体何をしてたの──? 約1000年前に〝黒霊山〟に封印されたって聞いて、そこに住まう〝天聖〟に聞きに言ったら、自分にも詳しいことは知らないから、放っておいてやれって言われるし。それから間もなく〝天聖時代〟は終わるしで、あの時ばかりは私も焦ったわよ」
「国を二つとゴミをいくばか滅ぼしたら、あの時代の〝大聖女〟に怒られてしもうての。少しばかり未来へと眠りにつかせて貰っておいた。そこの主様に最近封印から起こされて、今は共に旅をしておる」
抱きつかれた黒芒は特に慌てた様子も、リリリ程の感激も無く「久しいのう」と、マイペースに経緯を話している。
「主様? 貴女、ユキマサに遣えているの?」
「忌々しい封印を解いて貰えたし、成り行きでの」
「ふぅん。貴女がいいなら別にいいわ」
リリリは黒芒への信頼が厚いらしく、詳しくは聞かなかった。
本の数秒で外の林にある木でリリリは黒芒用の椅子を魔法で作り自分の隣に黒芒を座らせる。
リリリ、黒芒のこと絶対好きじゃん。目に見えて機嫌が良くなってるし。
「黒芒、何か飲む?」
「妾は酒が飲みたいの」
「お酒ね。ちょっと作ってくるわ。こないだ振る舞って丁度切らしてしまってるの。私は特別な来客時ぐらいしか飲まないし」
あれ? 酒ってそんなパックで麦茶を作るみたいに作れたっけ? まさか魔法で作るのか!?
てか、来客って十中八九の確率で斑だろうな。あいつも恐らくだが黒芒に負けず劣らずの酒豪っぽいなー。
そしてそのまさかでリリリは「♪」と、杖を振り、水道から水を取り出す。取り出した水は大きなシャボン玉みたいに真ん丸でプカプカと宙に浮いている。
へー、あれが酒になるのか。どうやるんだろうな。
いや、魔女や黒芒の物差しで『ちょっと作ってくる』って言われても『はい、これで1年待てば完成よ』何てことになっても何ら不思議はない。
リリリが更に杖を振るうと、パタパタと戸棚の奥から酒樽が、こちらも宙にプカプカ浮きながら現れる。
そしてもう一度リリリが「♪」と杖を振るうと、あれ? 酒の匂いがしてきたぞ! 弱いやつなら匂いだけで酔ってしまいそうなぐらいツーンとしたアルコールの匂いが。そうしてる内にシャボン玉型のさっきまで水だったものが魔法で一瞬で酒に変わり酒樽に落ち着く。わー、1斗はあるなー。これ。
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