第647話 ノアとシアナ2
「国が滅びて、私やヴォロンとフォルタニアの王族の心臓と、果てはエルルカや火澄の心臓まで取られてたかもしれないとなると〝世界樹の破壊〟と〝王宮の崩壊〟だけで済んだのは稗月倖真のおかげだと言っていいのかもしれないわね。ガリアペストの魔王討伐の一件も実はフォルタニアに確認してるわ……魔王を討伐したのは稗月倖真よ」
最後の方は声が震えていた。ノアはシアナにも後ろめたさがあるのだろうとホッとした。
同時にそれだけの功績を認めながらもユキマサを指名手配しなければならないシアナの心中を少しだけ同情もした。
「ねぇ、シアナさん〝最高貴族〟がそんなに怖い?」
「……怖いに決まってるでしょ。星一つ破壊する権限を持っているのよ。誰でも命は惜しいわ……」
シアナは震えていた。長寿の種族のエルフであれ命は惜しい。もしも『長く生きるのには疲れた。もう満足だ』と、本当に口にすることができる人類がいるとすれば更に長寿な幾世霜の時を生きる〝幻霊種〟ぐらいのものだろう。
「多分、そこが違うんだと思う。ユキマサ君とは、彼は絶対に屈しないよ。権力にも戦力にも。ちなみに私はユキマサ君派かな。確かに死ぬのは怖いけど、抗ってみせる。それが生きるって事なんじゃないかな?」
「……若いわね大聖女……って、ああ、貴女は実際若かったわね。知らないなら教えてあげる。そんな綺麗事じゃ世界は渡れないわ。この世には汚いことも溢れかえっているのよ! 実際、私がどれだけ苦労して稗月倖真との約束のフォルタニアの政略婚約の破棄をさせたか。貴女には分かる?」
シアナはまだ震えていた。実際ノアにはどうやって〝最高貴族〟を納得さえさせられないもの、事実婚約破棄まで持っていったかは分からない。
だが、相当苦労したのは確かだろう。
「シアナさん、神様って本当にいると思う?」
質問に質問で返すノアだがシアナは突っ込まなかった。
「いるならば是非とも会ってみたいものね」
「いるよ。神様──」
「──ッ!?」
ハッキリとしたノアの言葉にシアナが言葉を詰まらせた。妄想や嘘の類いではない。サラッとした物言いだったが、ノアの言葉からは一切の余念を抱かせない真の強い言葉であった。
それに大聖女から神様がいる等との発言事態が異例なのだ。特にノアは『神はいるのです』と、胡散臭い宗教染みた事を言うタイプでは無い。
「なら何で、神様は何もしてくれないの? 魔王は? 魔族は? 何であんなものを放っておくの?」
「ううん、ちゃんと神様は動いてるよ。この世界の魔王討伐に一つの希望を遠い異世界から呼び寄せた。実際にその種はもう結果を出し始めてる」
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