第641話 アルカディアの会合16
ノアの発言にシアナは片手を額に当てながら非常に困った様子で言葉を紡いだ。
「……ウルスラは稗月倖真によって瀕死の状態まで追い込まれたわ。まさか〝原始の黒〟をあそこまでコテンパンにするとは私も目を疑った。瀕死の状態のウルスラを再度封印するのは……
流石に相手が相手だから簡単とまでは言えないけど、思ったより数百倍は楽だったわ。今はまた封印に結界を施して……火澄……確かな人物に預けてあるわ」
「火澄さんと言うと〝樹霊守護者〟か〝シルフディート〟には彼女もいたね。今の〝シルフディート〟では一番強いや。職種は〝世界樹の守人〟でも、確か彼女は数年に一度の〝神霊祭〟にしか〝世界樹〟を離れられないんじゃなかったっけ?」
「稗月倖真とウルスラとの戦いで〝世界樹の核〟が壊れて、自由に出てこれるようになったらしいわ」
まだ額に手を当てながらシアナが困り果てたように真実を話す。
「本当なら国が一つ……ううん、もっと沢山の国が滅んでたかも知れない。これはそんな事態じゃないかな? というか〝世界樹〟を破壊したのはどんなに低く見積もっても半分はウルスラだよね?」
静かに、だが鋭い声でノアが追求する。
「……稗月倖真には選ばせたわ。ウルスラの一件の報酬を。フォルタニアの婚約破棄か国家襲撃の見逃し。そして彼は前者を迷わず選んだ。分かってちょうだい。片方だけの要望でも〝最高貴族〟を納得させるのにどれほど苦労したか……」
「……分かるよ。よくあの〝最高貴族〟を相手に話をつけたと思う。でも、本来なら、指名手配も撤回してもらわないと。彼の力を頼らないと人類の存続はない。これだとガリアペストの魔王討伐の報酬が無い。それも分かってもらえるかな?」
「フォルタニアに確かめさせたわ。脅しじゃない」
「うん?」
「〝最高貴族〟の持つ〝デストルークティオーコール〟その起爆を〝最高貴族〟は脅しでは無く実行する。死ねば諸とも後は関係ないって感覚で。まるで子供ね。自分達の思い通りにならなきゃ気が済まない」
次に口を開いたのは〝聖教会教皇〟アルドス・フォールトューナだ。
「ノア、お前の魔法で防げないのか?」
「うーん、防げなくないけど数がね……同時にニヵ所で星が滅ぶ規模の爆発が起こるとなると全部は防げないかなぁ……」
流石に無理かなと頭を抱えるノア。
そして不意に貴族から疑問が上がった。
「はて、素朴な疑問なのですが、魔王領と人類領にある星の核の内、魔王領の方だけを破壊すれば魔王や魔族を一網打尽にできるのでは?」
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