第63話 懸賞金
クレハからの助言もあり、俺はフォルタニアから〝魔王信仰〟の禁術者の討伐報酬として〝金貨100枚〟を、これまたありがたく受け取る。
……にしても、日本円に換算すると1000万だぞ?
あぶく銭にしても、中々の額だ。
勿論、凄くありがたいんだが──
1日に、こんな風にポーンと一気に大金が入って来ると、何か金銭感覚がおかしくなってくるな。
(昔から、しっかり貯金する派の母さんや理沙には、親父共々『金銭感覚は大事に持ちなさい』とかよく言われたしな……)
「これでギルドマスターに怒られずに済みそうです。……ですが、本音を言えば、不思議と、少し残念な気持ちの自分がいる事に、私自身驚いています」
聞き取りやすい綺麗な声で、淡々と話すフォルタニアだが、本当に少し残念そうな空気を出している。
「そうか、じゃあ、返そうか?」
「む、ユキマサ様、意外と意地悪ですね……?」
もちろん俺は冗談半分で言ったのだが……
フォルタニアが『そうですね、じゃあ、返してください』と言って来たら本気で返す気でもいた。
俺にからかわれた形になったフォルタニアは、いつもの丁寧な対応なのだが……
業務的な対応では無い、新鮮な反応をしてくるので、俺は少し面白くなって来てしまう。
意外に、からかい甲斐のある奴なのかも知れない。
「悪かったよ……それにしても〝懸賞金〟とはいえ、金貨100枚とは──随分と羽振りがいいな?」
「万が一にも〝アーデルハイト王国〟のお姫様が、この〝大都市エルクステン〟で……それも白昼堂々と町中で襲撃に合い、怪我──下手をすれば、最悪の場合、殺されてしまっていた可能性も十分にありますからね……そんなことになれば、ギルドは愚か、この都市自体の警備責任や面目丸潰れ所の話しではありませんから……むしろ、少ないぐらいですよ?」
まあ、アリスは半家出中みたいなものだったから、もしそうなったとしても……半分はジャン達の責任もあるとは思うが。
それでも〝魔王信仰〟の侵入を気づけなかった事はギルドもだが、特に〝エルクステン〟の都市にも責任問題はあっただろう。
「それとお恥ずかしい話なのですが……実は〝禁術者〟が誰なのか──まだ名前すら分からないのです。勿論ですが、名乗った訳でも無いので、分かっていることは〝魔王信仰〟の者という事と〝禁術〟が使えるぐらいには実力者という事だけです……」
「いや、それでこんな懸賞金が出るのかよ?」
「そうですね。元々〝魔王信仰〟の者は、下っぱの者でも、各国から最低限の懸賞金が出ますから。第3騎士隊の報告から見ても、最低でもこれぐらいの額は付いてもおかしくないと言う、私共ギルドの判断です」
うーん。そう言う事かよ……
「それに〝禁術者〟ともなれば、レベル70越えである〝二つ名持ち〟クラスと考えて良いでしょうからね……ユキマサ様、何か知ってる事はございませんか?」
「レベルは知らんが……確か、名前は──ガルロ・ウィスベントとか言う奴だ」
俺は、あの〝魔王信仰〟の奴の名前を、スキル〝見聞〟で見ていたので、それをフォルタニアに伝える。
「ガルロ・ウィスベント? いつ、その名を知ったのですか?」
俺が言った事が、嘘では無い事がフォルタニアには直ぐに分かるので『それは本当ですか?』では無く『いつそれを知ったのですか?』と問いかけて来る。
「知ったと言うよりは見たって感じだな。俺のスキルに〝天眼〟ってのがあるんだが、そのスキルを使えば相手の〝ステータス画面〟ぐらいなら……まあ、何と言うか、覗き見れる……」
「〝天眼〟……そんなスキルもお持ちでしたか。確か〝聖教会〟の〝大聖女様〟も、それと似たようなスキルをお持ちだったと記憶しております」
(〝聖教会〟の〝大聖女〟──エメレアやフィップも、その〝大聖女〟とか言う人物を話に出していたな?)
「それに確か──ガルロ・ウェスベントと言うと、数年前に壊滅した筈の、大規模な盗賊団の頭の名前と一致しますね。二つ名は〝王族狩り〟……しかも、その人物は盗賊団の壊滅後、他の盗賊団の者を囮にして、逃亡し、未だに行方知らず……これは偶然でしょうか?」
「さあな? そこまでは知らん……」
「……の、覗き魔……ユキマサ……変態……黒い……」
勿論だが、そう呟くのはエメレアだ。
てか、オイ、待てコラッ! 黒いは別に悪口じゃないだろ! ──と、俺は抗議しようとしたが……
その前に「エメレアちゃん、静かにだよ」と、クレハにお叱りを受け「う……はい……」とエメレアは静かになったので、俺は開こうとしていた口を閉じる。
「もし、本当にその〝王族狩り〟だったとしたら〝魔王信仰〟ということ以前に〝イリス皇国〟やエルフの国──〝シルフディート王国〟等からも指名手配されてる人物です。少なくとも、懸賞金を合わせれば金貨100枚では到底足りませんね……」
「取り合えず保留で頼む。それに名前は一致したとしても100%の確証は無いだろ?」
「…………そうですね、分かりました」
少しの間の後に、フォルタニアは納得してくれる。
「そーいや、アトラはどうした? 帰ったか?」
──すると、ちょうど、そのタイミングで「あ、ユキマサさん! 見つけました!」と、今しがた俺が行方を探していたアトラが手を振り、鳩のハトラを肩に乗せてこちらに走ってくる。
「今、店主に確認を取ったら調理の件、全然大丈夫らしいです。むしろ喜んでましたよ! それと明日の夜からお店を貸し切りにしてくれるそうなので、孤児院の子達全員で、その時間に来てくれとの事です。あ、それと──調理料金は要らないそうです!」
「何だ? わざわざ聞きに行ってくれてたのか? 調理料金もだが、貸し切りなんていいのか?」
「はい、以前の〝大猪〟のお礼らしいです! お陰様でここ2日で何か数ヵ月分の売上があったらしいですよ! 女将さんも機嫌が良くて、ハトラの件も許可を貰いました!」
「そうなのか? ありがとう、クシェリにもそう伝えて置く。肉は俺が明日にでも店に届けると言って置いてくれ。あと、ハトラの件、良かったな?」
「はい、分かりました! それにハトラはもう私の家族です! あ、これからお店に戻らなきゃなので、これで失礼しますね! クレハさん達もそれでは!」
ぶんぶん! と、手を振るアトラは颯爽と去っていく。
そしてよく見ると、鳩のハトラも片方の翼をパタパタと振っている。
「あのハト賢いわね?」
手を振り返す鳩のハトラを見て、エメレアがボソッと感想を呟いている。
ちなみに、嵐のように来て、嵐のように帰って行ったアトラについては、クレハ達は慣れっこみたいで、特に何も言わず手を振り返している。
「……えーと、それじゃ私達も帰ろっか?」
──と、言うクレハの言葉に反論する意見も特に無く、俺達はフォルタニアに軽く挨拶し、ギルドを後にする。
ちなみにエメレアとミリアは寮に帰るらしい。
俺とクレハはクレハの家に帰るので、ギルドを出た所で、軽く言葉を交わし、それぞれ帰路に着く。
「じゃあ、ユキマサ君、私達も帰ろっか?」
「そうだな」
「で、帰ったら、今日の事を、じっくりとお話聞かせて貰うからね?」
そう言いながら、表情は穏やかだが、何やら迫力のある笑みに俺は「あ、ああ……」と少し言葉に詰まりながら、何とも曖昧な返事を返すのだった──。
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