第638話 アルカディアの会合13
「稗月倖真の指名手配は変わらないわ。懸賞金は金貨一万枚。差し当たって、人類最強の冒険者パーティー〝スマイル〟の現リーダーのチェリッシュ・アーガイザー。貴女達に今回の稗月倖真の討伐を依頼したい。わざわざ足を運んでもらい指名してまで危険な依頼を頼むんだから、成功報酬も期待してもらって構わない。私からは成功報酬で金貨二千枚を上乗せするわ」
シアナは黙って話を聞いていた。人類最強の冒険者パーティー〝スマイル〟の現リーダー、綺麗で長い明るい茶色の髪に緑の瞳の歳は26歳だが幼さが残る為20歳ぐらいに見える。美少女……いや年齢的には美女の歳のチェリッシュに話を振る。腰には業物の剣を携えている。剣の名は〝翠月〟チェリッシュの愛剣だ。
「依頼とあらば引き受けるのは勿論やぶさかではありませんが……ふむ、金貨1万枚の指名手配犯の捕獲ですか……」
何かを考えるチェリッシュ。その瞳は鋭い。
「う、ウチの国も成功報酬を上乗せするぞ! 金貨500枚だ!」
「ウチも金貨300枚を成功報酬上乗せだ!」
「我が国も金貨700枚を上乗せする!」
やんややんやと金貨の成功報酬が上乗せされて行く。上乗せ額は最終的には金貨5000枚にもなった。
元の金貨1万枚と合わせて金貨1万5千枚。歴史的にも大変珍しい金額となった。
「私の上の判断もあるので確約はできませんが、取り敢えず今の返事としましては引き受けましょう。冒険者は基本お金で動きますから。それだけの額があれば色々と私たちも楽になる」
チェリッシュの返事にシアナは満足そうに頷く。
「後程、正式な依頼書を発行するわ。頼んだわよ」
「了解しました。シアナ陛下」
周りからは「これは心強い」「〝スマイル〟が動くか」「だが、リーダーの代替えをしてからはどうなんだ? あまり派手な噂は聞かぬが」「トリドル王よ、聞いておられぬか? 代替え後の〝スマイル〟は代替え早々に〝魔獣〟スカルガーデンの〝変異種〟を苦もなく討伐したと私は聞いておる。実力は〝王国魔導士団〟にも引けを取らないと私は確信しておる」と、声が上がる。
そんな中、黙って話を聞いていた一人の幼いゴスロリ服の少女が大きな声で叫んだ。
「待つのです、この大バカ共!! あいつを知りもしない癖にバカスカバカスカと民の税金で必要の無い懸賞金を使い込んで!! 恥を知るのです!!」
テーブルをバン!! と、叩き、叔父のゴアに「落ち着くのだ。よしなさい!」と、止められているアリスはブチギレていた。この場では誰よりも年下の少女が誰よりも今回の一件には腹を立てている。
「〝アーデルハイト王国〟ここは正式な会議の場、子供と言え、他国の重鎮への侮辱は赦されませんぞ。次は無い。覚えておきなさい。幼きアリス姫よ」
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