第635話 アルカディアの会合10
「──発言、よろしいでしょうか?」
スッと色白で綺麗な手を挙げたのは〝六魔導士〟の一人〝独軍〟シラセ・アヤセだ。
「勿論じゃ。説明を促したのは私じゃからの。思った話を聞かせてくれ。シラセ・アヤセよ」
「はい。まず私から見た彼は悪と言うには綺麗で優しい目と心を、正義と言うには少しだけ我が儘な性格をしていました。でも、総じての私の判断は彼は悪人ではない。共に〝魔王戦争〟を戦いましたが、その時に私は彼に命も救われています。
人望も厚く、私は彼を人類に必要な仲間だと思いました。それと、人によって小さな事かもしれませんが、彼は食べ物をとても大事にしていました。
炊き出しで豚汁(?)という変わったスープを私もご馳走になりましたが、彼はその時、残った人参の皮さえも、勿体ないからきんぴらにして自分で食べると言っていました。持論ですが食べ物を大切に出来る人に悪い人はあまりいません。ハッキリ言って私は彼を素敵な人だなとまで思いました。大まかですがこれが私が彼を〝王国魔導士団〟に推薦した経緯です。
〝最高貴族の暗殺未遂〟〝国家襲撃〟〝世界樹の破壊〟その全てが真実かは私には分かりませんが、何かしらの理由が必ずあるハズだと私は考えています。
最初は一度ユキマサさんには出頭して貰うべきだと考えておりましたが、今はそれも叶いそうにありませんね。このたった数日で少しばかり彼は有名に成り過ぎました。今、彼の出頭は自滅に近いことでしょう」
『あなたはまだ世界の汚さを知らないのね』
シラセは以前、エルルカに言われた言葉の意味が今なら少し分かる気がした。
どうもこの会議はキナ臭い。まるで会議をする前に最初から答えが出ているかのように。
〝最高貴族〟──直接会った事は無いが、あまりイイ噂は聞かない。多分〝三王〟にも匹敵する有り余る権力で罪を揉み消しているのだと直ぐ頭に浮かんだ。
では、本当の正義はどちらにあるのだろうか?
シラセはモヤモヤとした気持ちが胸に残った。
今は人類の宿敵である〝魔王〟を倒すことを第一に考えねばならないというのに、人類同士で争っている場合じゃない。今、話されるべき事。その何かがズレていることにシラセは少し苛立ちさえ覚えた。
(エルルカさん……貴女もこんな気持ちだったんでしょうか? すみません。やはり貴女の判断は正しかった。加えて私はまだまだ未熟者のようです)
〝王国魔導士団〟の中で一番の若手であるシラセを誰よりも親身に接してくれたのはエルルカであった。
シラセはそんなエルルカが大好きだった。
エルルカの〝王国魔導士団〟の脱退を心から悲しんだのも、また逆に新たな門出として応援したのは、世界で唯一シラセただ一人なのかもしれない。
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