第630話 アルカディアの会合5
「大聖女様、先の〝魔王戦争〟で魔王愧火を撃退したのは本当にあなたでは無いのですか?」
「うん、私じゃありません」
「では、誰が? あの場には〝剣斎〟も居たと聞いていますが。ならば彼女が?」
「いえ、違います」
司会のヒマツリの質問にノアは淡々と答える。だが、そんなノアに痺れを切らした王族の一人がドン! と、テーブルを叩き声を荒げる。
「ならば一体誰だ! 何故はぐらかす! そもそも魔族が魔王になる何て前代未聞だ! 〝魔王石〟は何処から流出した! 〝魔王石〟を管理しているのは〝聖教会〟のハズだろう!」
「いいえ、はぐらかしはしません。ハッキリ言います。私は魔王の撃退者の名前を言えない。それがその人との約束だから。それに〝聖教会〟が保管してる〝魔王石〟は無事です。今も厳重に保管されています。今回の一件の〝魔王石〟の出所は別にあります」
すると〝聖教会〟の〝教皇〟アルドス・フォールトューナがポツリと呟く。
「〝白獅子〟……」
アルドスの呟きが波紋を生む──「白獅子!?」「白獅子だと!?」「バカな、白獅子が何故今になって姿を現す!」「だが、奴は確かに〝7年前の魔王戦争〟で〝魔王ユガリガ〟の〝魔王石〟を〝天聖の遺産〟と共に持ち去っている」ザワザワと広がるどよめきの中、ヒマツリがノアに質問をする。
「では〝白獅子〟から〝魔王石〟が流出したと考えてよろしいですか? まさか撃退者も彼が?」
「確証は無いけど多分そうだよ。後、撃退者は違う。あ、撃退者のyes.noの回答は、これで最後ね。消去法なんて言葉もあるからね」
ノアの言葉に会議場は少しピリ付く。
「大聖女殿。ここは今、人類の最重要会議にして、王族、貴族、王国魔導士団、果てには三王までおります。どうか、貴方の知ることを包み隠さずに私たちに教えてはいただけないだろうか?」
如何にも王様と言った風貌の中年の男性はノアに紳士的な物言いで話しかける。
「ごめんなさい。私の一存でどうにかできる規模の話しでは無くなってる。私の首を一つ、いや〝聖教会〟の立場を全て賭けても足らない。ねぇ、ポリメシア国王様、貴方は魔王となった愧火をたった一撃で撃退した人との約束を違えて、その責任を負うことができる? いえ、この場の全ての皆さんに聞きます。魔王を圧倒する実力者を敵に回すような行動に責任を持てる方が居るならば、今この場で名乗りをあげてください。私が詳しく話を聞きます──先に言って置きますが、あの人は私よりも確実に強い。それこそ先ほど名の上がった〝白獅子〟よりも」
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