第62話 厄介
先程から……むぎゅぅ~~~~! っと──クレハに抱きつくエメレアは、一向に離れる気配が無い……というか、離れる気は特に無いみたいだ。
ちなみにエメレアの後ろでは「エメレア、元気になってよかったね!」と、幸せそうなエメレアを見てるミリアは、まるで自分の事のように嬉しそうだ。
俺がそんな様子を眺めていると……
こちらに一人の人物が歩いてくる。
「──皆様お疲れ様でした。特にユキマサ様〝魔王信仰〟の件は本当にありがとうございました。ギルドを代表し深く御礼申し上げます」
話しかけて来るなり、深々と頭を下げてきたその人物は、副ギルドマスターのフォルタニアだ。
上司が来た事により、クレハに抱きついていたエメレアも、名残惜しそうにだが、クレハから離れる。
そしてクレハ、エメレア、ミリアの三人は
「「「お疲れ様です!」」」
と、声を揃え頭を下げている。
「最終的に〝黒い影の上半身だけの巨人〟みたいになった奴……確か〝禁術者〟とか呼ばれてたな? ──それにあれの他にもフィップ達が捕らえた〝魔王信仰〟の奴がいたよな? あの後、どうなったんだ?」
「その件もお伝えしに参りました。それが……捕らえた〝魔王信仰〟の者は気を取り戻した後、その全員が自ら命を絶っています。予め、何か細工をした呪術を体内に施していたみたいで……申し訳ありません。結果的に何も有力な情報は得られませんでした……」
敗北し、もう逃げられないと悟ると……直ぐに自害したのか。敵に殺されるよりはみたいな武士道精神なのか、それとも魔王への狂った信仰心からの行動なのかは知らないが……
「厄介だな」
そうなると〝魔王信仰〟の奴らは、恐らくその殆どの信徒が〝命すら簡単に投げ捨てる覚悟〟で、何も怖いもの無しに仕掛けて来ると考えていいと言う事になるぞ──
「ええ、その通りです。正直、厄介と言わざるを得ません。私的には、嘘の情報の一つでも吐いてくれた方がどれ程よかった事か……私なら嘘の情報を吐いた所で、それが嘘だと分かりますから、そこから多少なりと推測ぐらいはできますので」
(なるほど。スキル〝審判〟はそういう使い方もあるのか……簡単に言えば消去法だな。それに、確か濁すような発言や暗示的な発言も分かると言っていたな?)
トランプの〝ダウト〟に於いては無敵だな。
それこそチートだ。勝てる気がしない……
「そうか。それは残念だったな……」
「はい。それとですが、ギルドから今回の〝魔王信仰〟による襲撃の主犯である──〝禁術者〟の討伐の報酬金を、ユキマサ様に必ず受け取って貰うように、ギルドマスターより承っています」
いつも通りの綺麗な声で、要点をしっかり伝えてくるフォルタニアは『必ず』の部分を強く強調して、ここは譲れないと言う意思がひしひしと伝わってくる。
「報酬か……確か〝第3騎士隊〟の〝鳥人種〟のフィオレが、そんな事を言ってたが『手柄はやる』って言っちまったからな……そっちに渡しといてくれよ?」
「ユキマサ……貴方、またそんなスカしたこと言って! ──後、昼間の騒ぎは何なの!? それにフィオレさんも困ってたわよッ!」
黙って話を聞いてたエメレアがここで口を開く。
「そうですね。フィオレさん達からも辞退のお話を受け取ってますし、私もギルドマスターの方から今回は『必ず受け取ってもらうように』と釘を刺されていますので──受け取ってくださるまでは、朝から晩まで、何処までも後を付けさせて貰う所存です」
「……付いてきてどうすんだよ?」
フォルタニアが『付いて来る』って言ったら、
……これマジで付いて来るぞ?
それこそ、俺の居候先であるクレハの家まで。
ちなみにエメレアが「ちょ、ちょっと! 私の話しは無視なの! 何か返事ぐらいしなさいよ!」と、ぎゃーぎゃー騒いでいるが、コイツは後回しだ。
「そうですね。朝から晩まで一緒なのですから、食事や睡眠に……それにユキマサ様でしたら、シャワーも御一緒して、お背中ぐらいならお流しいたしますよ?」
イタズラっぽく話すフォルタニアだが、ここで俺が『じゃあそれで』と言ったら、恐らくは本当に背中を流してくれるのだろう。
「……ユキマサ君?」
「な、何だよ?」
最早、怖いぐらいのクレハの笑顔の迫力に、俺は言葉が少し詰まってしまう……
「ギルドマスターとフォルタニアさんがこう言ってくれてるんだから、その報酬も受け取っておいた方がいいんじゃない?」
クレハは普通の事を言ってくれてるのだが……何だろう、俺の何らかの本能が〝クレハの言う通り報酬を受けとれ〟と、警鐘を鳴らしている気がする。
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