第610話 天空都市ラタトイユ13
「そなたに何が分かる? 確かに桜の戦闘能力は弱い、だからなんじゃ? 桜は大切な妾の仲間じゃ、バカにするでない」
バッと、黒芒は扇を取り出す。
「戦りますか? この私と」
対するミモス・ラスは本を構える。
「これは驚いた。妾と桜に力の差があり不釣り合いと言っておった貴様が、妾と戦うと申すか? はて、妾と貴様の戦力差も分からぬ雑魚が粋がるでない」
これは不味いと思ったクレハが慌てて仲裁に入る。
「黒芒さん、ストップ、ストーップ、落ち着いてください! そちらの方も武器をしまってください」
「退きなさい、小娘! そこまでバカにされては私の冒険者パーティーの名にも傷が付くという物です」
攻撃とまでは言わないが、ドン! と、ミモス・ラスがクレハを突き飛ばす。
「クレハお姉さん!」
桜が叫ぶ、だがそれよりも先に黒芒は動いていた。転ぶクレハがどこか打たないように気を使いながら支え、次の瞬間、凄まじい殺気を放っていた。
「おい、小僧、死にたいのか?」
時が止まったようにギルドが静寂した。誰も彼もが黒芒から目が離せないのだ。仲間である桜やクレハでさえも息を呑みゾッとした。
「……ッ……!?」
ミモス・ラスは動かない。いや動けないのだ。
「黒芒さん、私はお陰様で大丈夫ですから落ち着いてください」
凍えるような黒芒の殺気の中で唯一、言葉が発せたクレハが黒芒を宥める。
「せ、千妖だか、何だか知らないが、舐めるなよ! 《閃け・伝承よ・理を持って・我が願いに応じよ》──暴風の書!」
開かれた本が強く輝き、無数の風の刄のが黒芒を襲う。
「み、ミモス副団長! こんな所で魔法を使うなんて何を考えてるんですか!?」
団員から声が上がるが、頭に血が上ったミモスの耳には遠く届かない。
「ぬるいの、欠伸が出る。それに無粋じゃ、往来で魔法を使うなぞ、それでも冒険者か?」
黒の扇を少しだけ動かしミモスの魔法を掻き消す。
たった少しだけ動かした黒芒の扇の余波がギルドの建物を大きく揺らす。
「ミモス副団長の魔法が一瞬で破られた」
「何だあれは!? めちゃくちゃだ!」
「あの〝天聖〟と渡り合ったという伝説は本当だったか!?」
団員たちからどよめきの声が上がる。黒芒は怒り半分、呆れ半分と言った様子でミモスに言う。
「小僧、まだ戦るか? 戦力差も分からぬ雑魚がいくらかかって来ても結果は見えてるがの。頭に血が上ったバカが相手なら尚更論外じゃ」
扇を構えた黒芒が動こうとしたその時。
「何をやっている! ミモス! 僕は戦闘を許可した覚えは無いぞ!」
血相を掻いた、紫髪の青年、レイヴ・モルズが現れた。
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