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第59話 ハイかYESで2



「おい、これ何がどうなってんだ……?」

「修羅場です……これが修羅場というやつですよ……」


 頭を軽く掻きながらボヤくフィップと、ごくりと唾を飲み込みながらドキドキした目で見てくるアトラ。


「──ユキマサ。そういうことだがら、いつでも()()返事を返しに来なさいな。基本的に私は〝アルカディア〟にいるけど〝エルクステン〟に来てる時はレノンの〝武器屋・プレーナ〟にいるわ」


 落ち着いた口調でゆっくりと話すエルルカに、

「……わ、分かったよ」

 と、俺は少し言葉に詰まりながら返事をする。


「……」


 ムスッ……とした様子で、黙ってクレハは俺とエルルカの会話のやり取りを聞いていたが……


「と、というか、エルルカさん! いつまで抱きついてるんですかッ!? 離れてください! ──それにユキマサ君もいつまで抱きつかれてるの……?」


 ジト目で不機嫌そう俺を見ながら、クレハが(いま)だに抱きついているエルルカを引き剥がしにかかる。


「私の気が済むまでよ?」

「ダメです!」


 クレハが即答でエルルカの解答を断ると

 エルルカは『ふむ……』と少し考え込み……


「……そうね。いつまでも抱きついてるのも悪くないけれど、次は()()抱きつかれる側になるという手もあったわね……悪くないわ……」


 そう呟くと、エルルカはゆっくりと俺から手を離し、その離したばかりの両手を俺がちょうど収まるぐらいの幅で胸の前で広げ「さあ、来なさい?」と、長く綺麗な黒髪を靡かせながら俺を待ち構える。


「それもダメです!」


 すると、クレハは俺の手を取り──


 ──ヒュン! パッ!


 自信のスキル〝空間移動〟で俺を連れ、いつぞやの武器屋の時みたいに、エルルカから距離を取る。


「──!!」


 一瞬で、周りの景色や場所が変わる感覚にまだあまり馴れていない俺は、クレハが俺を連れての〝空間移動〟に「おぉ……」と少し感嘆の声を漏らす。


 そして〝空間移動〟を終えたクレハは俺を見ると、


「……ユキマサ君? 帰ったら、じ~っくりと色々とお話し聞かせてもらうからね?」


 顔は表面上は笑っているが、目と心が笑っていない。そんな作り笑顔でクレハは、先程からニコニコと笑ってくる。


「えーと……」

「いーい?」


 それは何気ない二、三文字の言葉なのだが……


 ゴゴゴゴゴゴゴ……!! 

 と、クレハから謎の圧力を感じる。


 ミリアの言ってた『何か、今日のクレハは〝ゴゴゴゴ……!〟ってしてたので』ってのは……この謎の圧力の事で間違いないろう。


 恐らくは、簡単に言えば〝ご機嫌斜め〟……

 他の言い方にすれば〝(おこ)〟なのである。


 でも、激が付かないだけマシなのかもしれない。


「……わ、分かったよ」


 さっきから俺は『……わ、分かったよ』しか言って無い気がするが、別に定型文で、取り敢えず返事を返してるわけじゃないぞ? 


 てか、すぐそこに、嘘か本当かを見抜く事ができる──スキル〝審判(ジャッジ)〟を持ったフォルタニアがいるんだから、嘘なんてついても無駄だしな。

 ……まあ、いなくても嘘を吐く気は無いけどさ?


「……うん……なら、取り敢えずは……よし……」


 まだまだ不機嫌なクレハだが、取り敢えずはお怒りの剣を(さや)に収めてくれたらしい。


「あ、あの〝剣斎(けんさい)〟がデレのデレだと……!?」

「やはり〝黒い女(たら)し〟ってのは本当だったのか!」

「いや、それに〝剣斎(けんさい)〟相手に一歩も引かない、あの〝騎士隊の子〟も凄いぞ!」


 ざわざわと兵士達が話す声が聞こえる。


「まったく、お前は行く先々で何かしらの騒ぎを起こさないと気が済まないのですか?」


 トコトコと俺の前に歩いてきて、軽く溜め息を吐くのは〝リッチ(熊のぬいぐるみ)〟を抱き締めたアリスだ。


 アリスが俺の目の前に来ると、クレハはちゃんと頭を下げている。でも、その前に何か他に色々と失礼があった気がするが……まあ、アリスはそんな事をイチイチ気にするタイプじゃないし別にいいか。


「お、お嬢様、危険です!」

「そうです、さあ、早くこちらへ!」


 やはり俺が〝どこの馬の骨とも分からない奴〟という認識の、アーデルハイト王国の兵士達はアリスを俺から遠ざけたいらしい。


(やかま)しいのです! 少なくとも私はコイツの事は嫌じゃないのです。それに責めるつもりは無いですが、理由は何であれ、みすみすと〝魔王信仰〟の襲撃を許した、お前達スットコドッコイよりは、コイツと一緒のが安全なのではないですか? ──それに、その〝魔王信仰〟の禁術使いを倒したのは、紛れもないコイツなのですよ……?」


「「……も、申し訳ありません!」」


 アリスにしっかりと怒られた兵士は、ぐうの音も出ない様子で、片膝をつきながら謝っている。


 それに対してアリスは「分かればいいのです。でも、心配してくれた事には礼を言うのです……」と兵士に言い──ちょっと照れ臭かったのか、自身の両手に抱える熊のぬいぐるみのリッチに、顔の目から下をモッフリと埋めている。


 最後に礼を言われた兵士達は「「お、お嬢様……!!」」と声を震わせ、感激した様子だ。


 その様子を、フィップは「ちっ……」と言いながら羨ましそうに見て、兵士を軽く睨んでいる。


 背後からフィップに睨まれてる事を本能的に〝危険〟と察したのか、睨まれた兵士達はブルりと身体を震わせている。


 ……まさに、飴と鞭だな。


 てか、フィップ。アリスが大好きなのは分かったから、殺意を込めて兵士達を睨むのは止めてやれよ?


 喜びながら(おび)えるという〝何かヤバい物にでも目覚めたんじゃないか?〟と思うような、兵士を見たアリスが「……ッ!?」と怪訝(けげん)そうな顔をしてるだろうが。




 ★★★★★★作者からのお願い★★★★★★


 作品を読んで下さり本当にありがとうございます!


・面白い

・続きが気になる

・異世界が好きだ


 などと少しでも思って下さった方は、画面下の☆☆☆☆☆から評価やブックマークを下さると凄く嬉しいです!

 (また、既に評価、ブックマーク、感想をいただいてる皆様、本当にありがとうございます! 大変、励みになっております!)


 ★5つだと泣いて喜びますが、勿論感じた評価で大丈夫です!


 長々と失礼しました!

 何卒よろしくお願いします!

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