第591話 次の街へ2
食事にしようと言うとクレハも桜も自然と笑みが溢れた。
俺とクレハはお茶を煎れ、桜にはオレンジジュースをコップに注いだ。なんでもオレンジジュースは小さい頃から大好きなのだとか。
そう言えば奴隷オークションの会場でもゲスト席に出されたオレンジジュースを美味しそうに飲んでたな。
いただきますをし、サンドイッチを口に運ぶ。
ドン!
(うん、美味い!)
ドン!
景色もイイし、絶好のピクニック日和だな。
バン!
絶賛、指名手配逃走中だけど。ハハハ。
「ユキマサ君、ごめんね。食事中に魔物と戦わせて」
さっきからドンドンバンと音がしてたが、それは俺が〝アイテムストレージ〟を応用した〝魔力銃〟での早打ちで湖から飛び出してくる大きな魚の魔物を撃ち抜く。魚なのに魔物だから倒すと消えちゃうので食べることができないのが少し残念だ。
親父譲りの食への探究心が強い俺は魔物を食らうと言うのもあまり抵抗がない。
〝元いた世界〟でも、ありとあらゆる物を食べてきた。ワニもダチョウもタランチュラもトナカイも食ったことがある。
まあ、ダチョウは日本で食べたんだけどな。タランチュラも今や珍味自販機で売ってる時代だし。
「気にするな。魔物は俺が倒すから、お前らは気にせず食事を進めな」
「うん、ありがとう!」
「はい、ありがとうございます!」
綺麗な手付きでクレハと桜はサンドイッチや唐揚げを口に運ぶ。
「!?」
俺は瞬時にフード付きマントを被り顔を隠す。
誰か来たからだ。まあ、指名手配犯だからな俺。
ガヤガヤ、ゾロゾロと歩いてこちらに向かってくるのは十人の剣やら斧やら槍やらを持った恐らくは冒険者。敵意は無いな。
「おーい、そこの兄ちゃん達ー!」
中年の無精髭の男がフレンドリーに話しかけて来る。
「おっと、食事中だったか、これは失礼。でもここは魔物も出るから気を付け──」
バン!
男の台詞の途中でまたもや湖から大きな魚の魔物が飛び出してくるが、俺は〝魔力銃〟の早打ちで片付ける。
「い、今……何したんだ!?」
男は心底驚いた様子で消えた魔物と俺を交互に見る。後ろの仲間たちからもどよめきが起こる。
「〝魔力銃〟の早打ちだよ。それと忠告どうも、この辺の魔物になら俺は遅れは取らないから大丈夫だ。ありがとう」
そう俺が告げると、
「ああ、兄ちゃん、強いんだな。銃の名手か」
戸惑いながらそう返事をする。
「あんたらも休憩か? 悪いな、陣取っちまって」
「あ……ああ、それはいいんだが兄ちゃんたちは冒険者か? 見ない顔だが」
「まあ、そんな所だ。正確には魔王を追っている」
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