第584話 シナノの新生活17
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「さ、しなのん、このお店ですよ! 時間が時間なので並んでませんね! ラッキーです!」
「はて、ここはクレープ屋さんですか?」
着いたのはこれまたお洒落な都会染みたスイーツ屋さん、もっと正確にはクレープ屋さんでした。
綺麗な女性の店員さんがクレープの生地を焼いています。何とも言えない甘い香りが鼻腔を擽ります。
「あれ? しなのん、クレープは嫌いでしたか? とても不思議そうな顔をしていますが?」
「いえ、クレープの存在は知っていましたが、今まで食べたことがないだけです。後、私に食べ物の好き嫌いはありません。あ、いえ、正確には好きか大好きの二択です」
皆さん犬猿しますが、ザリガニとかも私は大好きですよ。イカの切れ端で何匹も釣れて、揚げて唐揚げにすれば味はエビです。正にイカ一切れで十のエビを釣るです。ふふん、どうですか? 参りましたか?
さてクレープ屋なんてお洒落な店は私の住んでいた〝フェフジンテ〟の田舎街にはありませんでした。あってもあの街で需要度的にやっていけないでしょう。
「でも、クレープって高いんじゃ? 銀貨数枚すると風の噂で聞いたことがあります……」
「そんな高くないですよ。銅貨五枚~八枚もあればどの品もトッピング無しなら食べられますよ」
「そ、それなら私でも何とか手が届きます」
少し前の私なら全然手が届きませんが、今の仕事がある私なら銅貨八枚なら何とか手が出ます。
死ぬまでに一度は食べたかった夢のクレープ様、それが今叶おうとしています。きっと自然と笑みが溢れてしまうほど甘くて頬が落ちるくらい美味しいのでしょう。
スイーツデビューです。
私は今日スイーツデビューをします。
「あ、しなのん、ここは私が奢るので好きなのを一つ頼んでください。クリーム増し増しでいきましょう!」
「!!」
え? 奢り! 今、奢りといいましたか!?
「奢り! いいんですか! 私、遠慮しませんよ!」
キラキラと私は目を輝かせてることでしょう。
「はい。先輩のこの私に任せてください!」
後光です。アトラ先輩から後光が差して見えます。
「お言葉に甘えます! やったー!」
わーい、わーい! と、私は喜びます。
お忘れですか? 私は現金な女なんです。
「しなのんは奢り甲斐がありますね! 変に遠慮されるより気持ちが良いです! さ、急ぎましょう!」
残念ながら楽しい休憩の時間は後少しです。まあお仕事も私的にはとても楽しいのでそれはそれでいいのですが。
おっと、そうこうしてる間に、お先に二人組のお客さんが入っていきました。私たちも急がねば。
お先のお二人は手慣れた様子で「いつものをお願い」と、注文しています。どうやら常連さんのようです。あれ? どうしました? アトラ先輩が珍しく固まっています。お知り合いなのでしょうか?
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