第580話 シナノの新生活13
路地裏を進み、また大通りに出て、更に路地裏を進み、もう一度大通りに出ると目的の服屋さんはありました。
それにしても流石は〝大都市エルクステン〟です。何か思ってたよりも数倍お洒落です。私なんかが入店してもいいのでしょうか? 門前払いされたりしませんかね? いえ、私は今、小金貨一枚を持ってお店に入る立派なお客さんなのです。堂々と入りましょう。
「どうしました? しなのん、緊張してるんですか?」
私の顔を覗き込むアトラ先輩。
「だ、大丈夫です。私には小金貨一枚があります」
「? 良く分からない自信ですけど、とにかく参りましょう!」
お店に入ると「いらっしゃいませ!」と、元気の良く、煩過ぎず小さ過ぎずの声量で店員さんが現れます。それでいて最早芸術と言うまでの下げすぎず下げなさすぎずの一礼。この接客、間違いありません。プロです。プロフェッショナルの犯行です。
「……て、あら、アトラさん?」
金髪に眼鏡の知的でお洒落な20代ぐらいの店員さんはアトラ先輩を見ると「!」と、言った顔をします。
「こんにちは! ロビさん! お買い物に来ちゃいました!」
ロビと呼ばれたこのお洒落なお姉さんは私も見たことがあります。以前〝ハラゴシラエ〟に来ていた常連のお客さんです。確か人参がお嫌いな方のようで毎回人参を残していました。勿論、残った人参は私の胃袋の中です。
「いらっしゃいませ、大歓迎ですよ。と、そちらの方も〝ハラゴシラエ〟の店員さんですよね。確か名前はしなのんさんでしたっけ?」
う、アトラさんの愉快な渾名のせいで私の名前がしなのんで認識されつつあります。
思えばミリアさん、システィアさんにもしなのんさん、しなのん殿と呼ばれていました。
「あはは、しなのんは渾名で本名はシナノと言います。以後お見知り置きをいただければ幸いでございまする」
変な語尾になってしまいました。お客さんのお客さんになると言うのは何とも不思議な感覚です。
「これは失礼しました。シナノさんとお呼びした方がいいですか?」
「いえ、しなのんでも構いませんよ。存外気に入ってるんです。その渾名」
気に入った渾名なんて初めてです。
その昔、付けられた渾名なんて〝妖怪お金無し〟とか〝草原のプリン〟でした。それにしても〝妖怪お金無し〟は分かりますが〝草原のプリン〟とは何でしょうか? 草原要素もプリン要素も私には皆無ですよ。
それに比べて、しなのんとは私に似合わず何と可愛らしい名前でしょうか。最早恐れ多さまであります。
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