第576話 シナノの新生活9
袋に入っていたのは小金貨一枚でした。
「こ、これ貰っていいんですか!? お給料とは別に!? 小金貨一枚ですよ? 銀貨十枚分ですよ?」
「はい、そうですよ。いい感じにパニクってますね。そう言えばしなのんは大入りは初めてでしたね!」
ふふふ~! と、ニヤニヤ笑うアトラ先輩。
普通に嬉しいのがちょっぴり今は悔しいです。
「さて、しなのん。お小遣いもできましたよ! この食事が終わったら、私と街に繰り出しましょう!」
隣に座るアトラさんに後ろから肩を掴まれます。
「分かりました。行きましょう。興味が無いと言えば嘘になりますし」
そう言い、私は最後のカットステーキを口に運びます。とても、とても美味しいです。これがタダ何て本当に未だに信じられません。賄い万歳です!
*
「──しなのん、では、行きましょう!」
食事を終え、食器を洗い、テーブル拭きを済ませ、更に着替えを済ませると私たちは街に繰り出します。
「はい、では行きましょうか」
「それにしてもしなのん、私の貸した服、とても似合ってますよ。それにサイズもぴったりですね」
私服のアトラ先輩が私の腕に抱き付きながら楽しそうに笑います。明るく元気な人ですね。暗く後ろ向きな私とは正反対です。
「ありがとうございます。私の私服の継ぎ接ぎのワンピースはこの街では少しばかり浮いてしまいますから助かります」
私は服と言う服は母に貰った継ぎ接ぎのワンピースしかもってません。勿論、毎日〝浄化の結晶〟で洗浄し綺麗にしてはいますが、それでも服の劣化には耐えられません。
清潔ですが、ボロボロです。田舎ならば外も歩けたかもしれませんが、いかんせんお洒落な大都市では少し浮いてしまいます。変に思われるかも知れません。私一人ならそれも別に気にはなりませんが、これでは一緒に歩いてくれるアトラ先輩も変な目で見られてしまいます。
もう外では着られないかも知れませんね。顔を覚えられ、お店の評判を落としても面目がたちませんし。
もうあのワンピースは寝間着オンリーにしましょう、寝間着ならば誰にも見られませんし、迷惑もかけません。それもでも着られなくなったら前にも言ったとおりハンカチにでもしましょう。
これは私にとって代わりの無い物なんです。誰になんと言われようと捨てたりしません。絶対です。
「なら今日はしなのんの普段着を買いに行きますか? 小金貨一枚あれば高いのは無理ですが普通の程度のなら何着か買えるはずですよ!」
相変わらず、私の腕に抱き付きながらアトラ先輩が笑いかけます。ボディタッチの多いアトラ先輩に苦笑いしながらも私は確かに頷きました。
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