第575話 シナノの新生活8
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職場の皆と賄いのお昼ご飯を食べました。
恐る恐る勇気を出し私はお肉を注文すると、店主さんは「任せろ!」と、あっさりお肉様を下さりました。こんなことならもっと前からお肉を頼めばよかったと思ったり、思わなかったり。
「しなのん、この後は暇ですか?」
食事の最中に鳩を肩に乗せたアトラ先輩が唐突に私に話しかけて来ました。お店自慢のステーキをもぐもぐごっくんしてから返事を返します。
「いえ、特に予定はありませんけど。強いて言うなら夕方のオープンまでのんびりするつもりでした」
それにしてもこうして誰かと食事を取るのはいつ以来でしょうか、このお店に来てからは毎日誰かと一緒に食事を取っています。いえ、ユキマサさんとクレハさんと食事をご一緒しましたか、それ以前は亡くなった母と一緒に食べたご飯が誰かと一緒に食べた最後のごはんでした。それから数年、また誰かと一緒に食事をするなんて考えてませんでした。もぐもぐ。
「だったらしなのん、私と街にお買い物に行きませんか?」
「いえ、結構です。お金も無いんで」
キッパリと私は告げました。ウインドーショッピング何て言葉もありますが、私はお金もないのにお店を回るのはあまり好きではありません。
手に入らない物を眺めるのは切なくなります。虚しくなります。惨めになります。
「こ、断られました。フラれました。アトラ、ショックです。あ、でも、しなのん、今日は大入りも出ますよ!」
「大入り?」
はて、大入りとは何でしょうか? 食べ物でしょうか? そうですね、今はデザートが欲しい気分です。
「今日の売り上げなら出ますよね! 女将さん!」
「はいはい、用意してあるわよ。皆、よく働いてくれたわね」
どっ! と、バイトの皆さんから歓声が上がります。だから大入りとは何なんですか!? 食べられるんですか? 美味しいんですかっ!?
「はい、シナノちゃん、お疲れ様でした」
女将さんから小さな袋を渡されました。どうやら食べ物では無いみたいです。残念です。まあ、それはそうと、この袋は何だろうと頭に〝?〟を浮かべる私にアトラ先輩が大入りの正体を明かします。
「しなのん、大入りは、家のお店では一定以上の売り上げがあった時に配られるアルバイトの方も含め配られるボーナスですよ。早い話しお金です」
お金と聞いて私の身体は反射的に動きます。キラリと光った私の目を皆さんに見られたかも知れません。
でも、そんな視線には目もくれず私は袋の中を確認しました。
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