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第569話 シナノの新生活2



 二人の頭に拳骨が落ちたのはシナノがミニトマトを口に入れて間もなくのことだった。

 それでも尚、口からミニトマトを吐かなかったのは最早シナノの成せる技と言うものだろう。


「うう、痛いです。私は注意してたのに」

「……痛いです……」


 二人に拳骨を落としたのは他でもない〝ハラゴシラエ〟の女将であるメリッサだ。


「全く忙しいのに二人してくっちゃべってるんじゃないよ! シナノちゃんも摘まみ食い……とは、また違うのかしら。もう残した奴は食べてもいいけど、決してお客様に見られないこと、いいわね?」


 花が咲くような笑顔とはこの事だろう。

 シナノの顔は瞬く間に綻んだ。


「公認です……公認が貰えました。もう解雇に怯えてお客さんの残り物を食べる日々にはさよならです」


 ああ、神よ。とばかりに両手を合わせた後に、シナノはバンザーイ、わーい! と両手を真上にあげる。

 そんなシナノにお客から不思議な視線が集まる。それはそうだ、異世界だろうが日本だろうが、飲食店の店員が諸手を挙げてバンザーイをしてる光景など滅多にどころではなくまず無い。


「う、仕事に戻ります。もぐもぐ」


 顔を赤らめながら仕事に戻りつつ、でも、隣のテーブルに残っていた、人参を目にも止まらぬ早業で口に運んでいた。


 *


 そんなシナノをまじまじと見つめる人物がいた。


「ハハハ、スゴい早業だな。あの速度が剣術や魔法に生かせたら、もしかしたらスゴい人物になるのではないか?」


 金髪の大きなポニーテールが微かに揺れる。


「システィアお姉ちゃん、どうしたの?」


 テーブルを挟み向かいに座る小動物のような雰囲気の長い水色の髪の少女がキョトンとした顔で問いかけた。

 水色髪の少女はふと後ろを振り返るが別に変わったことは無い。頭に〝?〟を浮かべながらシスティアに向き直る。


「ふふ、何でもない。ここで私が見たことを話せば彼女が女将殿に怒られてしまうからな。私は何も見てない。それでいいんだ。っと、注文していた料理が来たようだぞ、ミリア」


 何とも言えない料理の凄く良い香りが鼻腔(びこう)(くすぐ)る。

 そんな香りにミリアの顔は自然と(ほころ)んだ。


「お待たせしました! 野菜炒め定食とカルボナーラ2kgです! システィアさん、ミリアさん、いらっしゃいませ!」


 パタパタと料理を運んできたアトラが二人に笑いかける。


「忙しそうだな、でも、盛況そうで何よりだアトラ殿」

「こ、こんにちはございます!」


「あはは、朝からてんやわんやですよ。しなのんもフウラちゃんも他の皆もフル稼働です。でも、盛況なのは嬉しいです。一定金額以上の売上があると大入りが出るので! あ、おばさんが呼んでます。まだ話したいですが、私はこれで! ごゆっくりどうぞ!」


 ダッシュで厨房に向かうアトラを見送りながらシスティアとミリアはいただきますをし料理を食べ始める。


 ★★★★★★作者からのお願い★★★★★★


 作品を読んで下さり本当にありがとうございます!


・面白い

・続きが気になる

・異世界が好きだ


 などと少しでも思って下さった方は、画面下の☆☆☆☆☆から評価やブックマークを下さると凄く嬉しいです!

 (また、既に評価、ブックマーク、感想、いいねをいただいてる皆様、本当にありがとうございます! 大変、励みになっております!)


 ★5つだと泣いて喜びますが、勿論感じた評価で大丈夫です!


 長々と失礼しました!

 何卒よろしくお願いします!

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