第561話 桜のブローチ2
「黒芒どういうことだ? それはお前が言ってたヒロシと言う少年にあげたブローチなのか? 千年、千年だぞ? こう言っちゃあれだが、ただのブローチが壊れずに千年もの間を受け継がれてきたってのか?」
うむ。と、黒芒は頷いた。
それから黒芒は桜にブローチを返すと頭を撫でぎゅっと優しく桜を抱き締めた。
「よう、生きておってくれた。これからそなたと共に旅ができると思うと、楽しみで仕方がないのう」
黒芒は優しく笑った。ただただ嬉しくて仕方ない様子で。まあ、酔ってのことなのかも知れないが……
なんてな。あれが酔いから来てるものなのか、そうではないのかぐらいは俺でも分かる。
黒芒は一頻り桜を撫で回していた。まあ、桜も嫌がってないしいいか。戸惑ってはいるけど。
あたふたとしながら視線で桜が助けを求めてきてるが俺は軽く一瞥だけし、盃に入った酒を口に運ぶ。
その晩俺は結構遅くまで黒芒の酒に付き合った。
気づいたら寝落ちしていた。
温かい、誰かが俺に肩を貸してくれる感覚が頭に流れ込んでくる。一体誰がベッドまで俺を運んでくれたのだろうか? クレハか黒芒だろうが、俺は睡魔に身を任せ、そのままグッスリと寝た。
こうして夜は更けていった。
*
──翌朝。
俺が起きると黒芒は桜の寝る二階のベッドに腰を掛けていた。てか、こいつまだ飲んでるぞ!
あーあ、あんだけ買った酒がもう殆ど無いぞ?
飲みすぎだ。と、一言いってやろうと思ったが止めた。その酒はイイ酒だったみたいだからだ。
楽しく酔っている様子の黒芒はスヤスヤと眠る桜の顔を嬉しそうに見ている。
まるで姉……いや、親だなこりゃ。
「おはよう。黒芒、いい朝だな」
「朝は嫌いじゃ、じゃが、そうじゃな。たまにはこんな朝もあっていいかも知れん。久しく美味い酒じゃった。少し飲み過ぎてしまったの」
でも。嬉しそうに笑う黒芒は盃に入った酒を飲み干す。
「桜、安心そうにグッスリと寝てるな。祖父母のことも一段落とまではいかねぇが、一区切りついてやっと落ち着いて寝れたんだろう。もう少し寝かしといてやりな。これからの旅は少しばかり長いぞ」
「妾に取ってはあっと言う間じゃ。のう、主様……長生きしてくりゃれ」
「しみったれたこと言うなよ。なぁ、黒芒、俺はそう簡単には死なねぇぜ?」
ニヤリと笑うと、少しの間のあとに黒芒は微笑んだ「それはありがたいのう」と、言いながら。
すると賑やかに声が掛けられた。
「あっ、ユキマサ君、黒芒さん、もう朝ごはん出来るよ。桜ちゃんも起こして!」
どうやらエプロン姿のクレハが朝ごはんを作ってくれてたらしい、まあ、匂いで分かってたけど。
てか、朝食エプロンにフライパンて女子力……いや、嫁力高いなクレハ……うーむ、悪くない!
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