第560話 桜のブローチ
──〝ジークア王国〟(現代)・家の中
「黒芒、グッジョブだ。よくやった」
話の最中に一升瓶を空けた黒芒に俺は惜しみ無い称賛を贈る。勿論、酒を空けたことにじゃ無いぞ?
俺もかれこれゴミ……じゃなかった。いや、じゃないワケでもないか。最高貴族には腹が立っていたんだ。約千年前のこととは言え、奴等に一矢も二矢も報いた黒芒には手を叩き称賛を贈りたい。
つーか、黒芒、国を二つ潰したとか言ってたからマジで少し危ない奴かと思ってたけど超イイ奴じゃん。
つーか、同じ立場なら俺も国を二つぐらい滅ぼしてたと思う。
クレハと桜は唖然としている。どちらかと言うと国二つより最高貴族を殺したことに心底驚いてるようだ。
「しかし未来に逃がすとは、昔の〝大聖女〟も考えたもんだな。ノアは昔の戦争で焼けちゃって記述は残ってないと言ってたが、恐らく昔の〝大聖女〟が隠蔽に走ったな。じゃなきゃ最高貴族を殺した何て言う話が後世に伝わってないワケが無い」
「となると、妾に取って、あの時代の〝大聖女〟は大恩人ということになるの」
「違いねぇ、子孫になるが今度ノアにあったら礼でも言っときな。千年越しに」
そう言って黒芒は一升瓶の栓をもう一本空けた。
コイツ本当に酒好きだよな。
まあ、悪酔いもしないから別にいいけどさ。
最後に贈ったって言う、ブローチのアクセサリーも酒のおまけって言う部類の中では中々聞かない物だしな。普通は酒のおまけってグラスとかそう言う酒を飲む時に使える物じゃないのか?
「そういや、桜も古そうなブローチ持ってたな」
「あ、はい。家の家宝です」
ポッケからモソモソと取り出したのは銀色の苺の形をしたブローチだ。先祖代々受け継がれてきた物らしい。
桜の取り出したブローチに目を奪われる人物がいた。黒芒だ。酒の手も止まり今は真っ直ぐに桜の持つブローチに目をやっている。目を見開きながら。
「のう、桜。それを少し見せて貰えるかの?」
「あ、はい。大丈夫ですよ」
黒芒は桜から銀の苺のブローチを受け取ると、表を確認し裏を確認し、もう一度表を見るとポツリと口を開いた。
「のう、桜。そなた名は、姓は何と言う?」
「すいません。ちゃんと名乗ってなかったですね。私は時伽桜と申します」
『僕の名前は時伽寛です』
「おい、黒芒、どうした?」
「ふふ、ははははははは! そうか、そうか、このブローチにその名、間違いない。桜、そなたはあの小童の子孫であったか」
「「「──ッ!?」」」
「これ程に嬉しいことは無い──そうか、子を成し、命を繋ぎ、今の世で、その子孫に出会うか」
黒芒は心から笑った。運命的なまでの偶然に。
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