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第55話 テイムの輪



 *

 

 俺達は食事を終え、支払いを済ませて店を出る。

 ちなみに出てきた料理は、特に不味くも無く、美味くも無くだった。


「うー、家の店のが美味しかったです」

「同感だ。──それとアトラ? ダメ元で聞くが、お前ん所の店主に、用意した肉を焼いてもらいたいんだが、出張とかはできないか? 場所は知り合いの冒険者が運営する孤児院だ。勿論、金は払うぞ?」


「え、孤児院ですか? 聞いてみないとですが、ユキマサさんの頼みなら、多分大丈夫だと思いますよ?」


「本当か? だと助かる。後で少し店に顔出すよ」


 店主の肉の焼き方は絶品だったからな。もし可能ならこれは助かる。どうせなら、美味い物を美味い調理で食わせてやりたいしな?


「それと俺は買い物に行くけどお前達はどうする?」


「私も行くのです」

「お嬢が行くなら、勿論あたしも行くぜ?」

「はーい、はーい! 私も行きたいです!」


 あ、付いてくるのか? 

 『そろそろ帰る』とか言うかなと思ってたが。


「アトラじゃないが、プライベートな買い物だぞ?」


「帰っても暇なのです。だから、特別に寂し気なお前に付いて行ってやるのです。それに私はこの都市に来たのは初めてなので、色々見てみたいのです!」


 食事の際は流石に〝アイテムストレージ〟に仕舞っていた、リッチ(熊のぬいぐるみ)をいつの間にか取り出して、モフっと抱きしめるアリスは、まだまだ元気そうで、買い物に付いてくるのにノリノリな様子だ。


 するとフィップが俺の方に近寄ってきて……


「実は、お嬢はこの都市どころか……生まれてから〝アーデルハイト王国〟からは出たこと無いんだ。悪いがもうちょっと付き合ってやってくれよ?」


 と、ふわりと女性らしい良い香りをさせながら小声で俺に耳打ちして来る。……少し酒の匂いもするが。


「……分かったよ。でも、本当に私的な買い物だから、後でつまらないだとか言ってごねるなよ? それに俺もこの都市に来てまだ3日目なんだ。悪いが、都市の案内とかもできないからな?」


「あ、はーい! はーい! 私、この都市は長いので、美味しいお店とかなら分かりますよ!」


 〝ここは私の出番ですね!〟とばかりに、アトラはドヤ顔でそれなりにある胸をドーンと張る。


「それはありがたいが……今、飯食ったばかりだろ?」

「──はっ!? 確かに今は私もお腹一杯でした!」


 アトラは自身の腹部をすりすりと擦ると「!?」と満腹だった自分に、何故か驚きをみせる。


(俺はそのお前の反応に驚きだよ)


「まあ、都市のガイドぐらいは期待してるぞ?」

「あ、はい! それならお任せください! 私の知ってる場所なら、この都市の右から左までどこまでも案内しますよ! 私の知ってる場所なら、私に知らない場所はありませんからね!」


 ふふん! と、アトラは更にドヤ顔で胸を張る。


 てか『私の知ってる場所なら、私に知らない場所は無い』って……そりゃそうだろ? まあ、どのくらいの場所を知ってる知らんが、ここはアトラを信じよう。


「時間は()()ですが、私達が使える時間は()()です! じゃあ、早速大通りへ参りましょう!」


 『おー!』と、高めのテンションのアトラを筆頭に、俺達は大通りへ向かうのだった。



  大通りに着き。改めて、この異世界の街の店を見渡すと──食材以外でも〝元の世界〟でも、見た事ある物も、見た事ない物も、様々な物が売られている。


 クレハの家の石鹸とかも〝元いた世界〟の物と、見た目も匂いも、まんま同じだったしな。


「買い物と言っても何を買うのです?」


 隣を歩くアリスが、ふとそんな事を聞いてくる。


「本当に色々だ。大量の食料に、色んな道具や生活用品と──後は香りの良い木材とかも欲しいな?」


 今はクレハの家に居候させてもらっているが、俺がこの異世界に来た本来の目的は〝魔王討伐〟だ。


 俺はこの〝大都市エルクステン〟で、わざわざ〝魔王〟が攻めて来るのを、気長に待つ気は無い。


 ある程度の情報を集め、支度ができたら、こちらから〝魔王〟を倒しに向かおうと考えている──。


 それに()()()()いるらしいしな……


(何度も言うが、俺は魔王が3人いる何て最初は聞いてなかったんだからな? まあ、一人とも聞いてないけどさ? アルテナめ……次に会ったら愚痴の一つでも溢してやるからな──覚えてろよ?)


「そういえば、お前はこの都市に来たのは3日前と言ってたのですね?」

「ああ。だから、生活用品とかもあまり無い状態なんだ。それに、この都市に少し滞在したら他の国も見て回ろうとも思ってる。だから、長旅に必要な道具や、肉、野菜、魚、米といった食料も、結構な量を確保して置きたい」


「生活用品はともかく、今、肉や魚を買い込んでどうするのです? 生食材は腐るのですよ?」


 はぁ……と溜め息をつきながら「馬鹿なのですか?」と言ってくるアリス。


「そんな事ぐらいは流石に知ってる。……だが、俺の〝アイテムストレージ〟に入れといた食材は腐らないみたいなんでな?」


「「は……!?」」


 アリスとフィップは驚いた様子で俺を見てくる。


「あー、コイツの扱い方が分かってきた気がするぜ」

「同感なのです。イチイチ驚いてたら日が暮れるのです……」


 と、呆れ顔の〝アーデルハイト王国〟の二人と……


「ユキマサさん、ハトですよ、ハト! あ、敬礼です! あのハト、私に敬礼してきましたよ! かわいーです! くるっぽー!」


 偶然だろうが、鳩に敬礼されて喜ぶアトラは、礼儀正しく鳩にビシリ! と、敬礼を返している。

 ……てか、最後の『くるっぽー』は()()()か?

 

(この〝異世界〟にも鳩っているんだなー)


 と、そんな事を考えながら、俺は白い鳩と戯れるアトラを見てると……


「へぇ、それ、もしかして〝水仙鳩(すいせんばと)〟じゃねぇか?」


 同じくそれを眺めていたフィップが、鳩に目を止め「珍しいな?」とその鳩をじっくりと見つめ始める。


「何だ、珍しいのか?」

「主に〝スイセンの国〟に生息していた鳥だ。目が宝石(サファイア)みたいに(あお)くて綺麗だろ? 後、薄く銀色(シルバー)がかった白い羽が特徴だ。〝スイセンの国〟が滅んでから、パッタリと見なくなったが、生き残りがいたんだな」


 確かに、この白い鳩の目は蒼く綺麗で羽も銀色(シルバー)がかった白色の鳩だ。少なくとも、俺はこの種類の鳩を元の世界では見たこと無い。


「このハトは魔力を持ってる珍しい()()だぞ?」

「──は? 〝魔力〟あんのに動物なのか?」


 ハトって言ってたから、あまり気にしてなかったが、確かによーく見てみると魔力を感じる。


「お前はどこに驚いてんだよ? 種類は少ないが、()()でも、魔力を持ってる奴は持ってるだろうが?」


(──わぉ……!? まじかよ……?)


 こないだ倒した、いかにもゴッツくて魔物っぽい感じの〝大猪(おおしし)〟が魔力も無くて動物扱いだったから……


 〝魔力が()()()倒したら()()()生き物が()()〟で

 〝魔力が()()倒しても()()()()生き物は()()

 ……だと思ってた。

 

(クレハにでもちゃんと聞いとけば良かったな……)


「──決めました! 私、このハト飼います!」


 なでなでとハトを楽しそうに撫で回してたアトラは、急にこのハトを飼うと言い始める。


「飼うのかよ? てか、飼えるのか?」


 魔力を持ってるって事は、一般的にはそれなりには危険なんじゃないか?

 見た所、アトラに戦闘能力は無さそうだぞ?


「まあ、魔力のある動物を飼うならは〝テイム〟して置いた方がいいだろうな? この(むすめ)なら尚更だ」


「テイム?」

「……お前……やっぱ馬鹿なのか……?」


 何か可哀想な者を見る目で見つめてくるフィップ。


 いや、()()()の意味は何となくは分かるぞ?


「フィップ……説明してやるのです……」


 アリスに言われフィップが説明を始める。


(悪いな。まだまだこの世界には無知なもんで……)


「基本的に、魔力のある動物を飼うだのする時は〝テイム〟──具体的には動物に〝テイムの輪〟を付けるんだよ」


「〝テイムの輪〟? 何かのアイテムか?」

「ああ〝魔導具(マジックアイテム)〟だ。──ほら、これだ、一個やるから使ってみろ?」


 フィップが〝銀色の天使の輪〟みたいなのを、何処からか取り出してアトラに投げ渡す。


「わ、ありがとうございます! 後、使い方を教えてください!」


 てか、よく見なくても──〝魔導具(マジックアイテム)〟このハトよりでかくないか? どうすんだこれ?


「まずは、軽く魔力を〝魔導具(マジックアイテム)〟に込めて、それを発動させてみればいいのです。ちなみに、そのハトがお前を拒めば〝テイムの輪〟は弾かれてテイム失敗なので気を付けるのです」


 アトラの質問にはアリスが答えてくれた。


「なるほど。さあ、私のハトになってください!」


 早速アトラは〝テイムの輪〟に魔力を込めて、ラブレターでも渡すかのように、ハトに両手で〝テイムの輪〟を向け──頭を下げる。


「アリス、あのやり方はあってんのか?」

「独特ではありますが、特に決まりは無いのです」


 すると、アトラが手に持っていた〝テイムの輪〟が──ボワッと光り、ハトの方に引き寄せられるように吸い込まれて行き──〝テイムの輪〟が、ハトのサイズに合わせるようにみるみる小さくなって……最終的にはハトの片方の足に、足輪のような感じで収まる。


「どうやら成功みたいですね?」

「ほ、本当ですか! やりましたーー! フィップさん、アリスちゃん王女様、ユキマサさん、本当にありがとうございます!」


 わーい! わーい! 

 と、そのハトを抱き抱えて喜ぶアトラ。


「別に俺は何もしてないぞ?」


 どうみても俺は教わってた側だし。


「名前はハトラで決まりですね!」


 いつ決まったんだよ!? 

 まあ、お前のハトだし別にいいけどさ?


「これから宜しくお願いしますね、ハトラ!」


 よく見ると、その名前を気に入ったのか……

 ハトラはアトラの肩に乗り、ハトラは命名されると両翼をV字型に広げ「くるっぽー!」と、心なしか嬉しそうに鳴いてるように見える。


 ──つーか、仲いいな……おい……?




 ★★★★★★作者からのお願い★★★★★★


 作品を読んで下さり本当にありがとうございます!


・面白い

・続きが気になる

・異世界が好きだ


 などと少しでも思って下さった方は、画面下の☆☆☆☆☆から評価やブックマークを下さると凄く嬉しいです!

 (また、既に評価、ブックマーク、感想をいただいてる皆様、本当にありがとうございます! 大変、励みになっております!)


 ★5つだと泣いて喜びますが、勿論感じた評価で大丈夫です!


 長々と失礼しました!

 何卒よろしくお願いします!

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