第556話 千の妖の黒き芒18
「──ほう、えらく強そうなのが一緒にいるのう?」
「お初にお目にかかります──〝千妖〟の黒芒殿。私は当代の〝剣聖〟を勤めさせていだだいてる者です。以後お見知りおきを」
〝ラスナ王国〟は控えめに言って小さな国だ。そんな田舎国に〝大聖女〟と〝剣聖〟が揃ってやって来るなど前代未聞の話だ。
黒芒とここであったのも偶然ではないだろう。
「妾を捕らえに来たか? まさか〝大聖女〟と〝剣聖〟が、こんな田舎国に観光と言うワケでもあるまい?」
「黒芒さん、逃げてください! 僕が時間を稼ぎます。〝大聖女〟に〝剣聖〟と言えば人類の正義の象徴の方々です。一般市民の、ましてや子供の僕が盾になれば、攻撃も出来ない筈です!」
「無茶を言うでない。そなた何ぞこ奴等ならば小指一本で気絶させられ、それで終わりじゃ」
「そ、そんな……じゃあ、どうすれば」
「そんな顔をするでない。まあ、気持ちだけは貰うて置こうかの。それに小童、そなた一つ大きな勘違いをしておるぞ? ──妾がこやつらに遅れを取ると本気で思うとるのか?」
──応よ!! 悪を滅ぼすのが悪と言うのなら、そんな世界ならば、いっそのこと、権力、富、名声、力、その全てが壊れるまで暴れてくれよう!!
止められるものなら、止めてみるがいい!
燃え盛り、募る想いを胸に黒芒はそんな覚悟を決めた、その時だ。〝大聖女〟が静かに口を開く。
「大きな勘違いをしているのは貴方も一緒ですよ黒芒さん。私も彼も遠路遥々、貴方を捕縛しに来たのではありません。寧ろ、貴方を逃がしに来たのです」
「おかしなことを言うのう? 何の冗談じゃ?」
次に黒芒の言葉に反応したのは〝剣聖〟だ。
「〝剣聖〟は代々、正義の味方を生業として来た者です。今回の一件、我々は貴方を悪とは思いません。間違っても人を殺すのを正義とは呼べませんが、それでも貴方の行いは多くの者を救った。その少年も貴方が救った人の一人でしょう」
「逃がすと言うても、どう逃がすつもりじゃ? 〝特別魔導士団〟も動くレベルの案件じゃろう?」
「そうですね。十人いる〝特別魔導士団〟の内、その八名が招集がかかっています。彼らの目的こそ貴方の捕獲、もしくは討伐の筈です」
いくら黒芒と言えど〝特別魔導士団〟──後の〝王国魔導士団〟の組織にあたる八人を同時に相手取るとなると、厳しいものがあるだろう。
「幸いと言えば、この件に関して貴方の討伐を依頼された〝天聖〟は一切関与しないとの返事が来ています。っと、話が逸れましたね。黒芒さん、貴方を逃がす場所は未来です──」
★★★★★★作者からのお願い★★★★★★
作品を読んで下さり本当にありがとうございます!
・面白い
・続きが気になる
・異世界が好きだ
などと少しでも思って下さった方は、画面下の☆☆☆☆☆から評価やブックマークを下さると凄く嬉しいです!
(また、既に評価、ブックマーク、感想、いいねをいただいてる皆様、本当にありがとうございます! 大変、励みになっております!)
★5つだと泣いて喜びますが、勿論感じた評価で大丈夫です!
長々と失礼しました!
何卒よろしくお願いします!




