第552話 千の妖の黒き芒14
その時間は0.1秒にも満たないだろう、黒芒がたったそれだけの時間、扇を動かせば、この兵士はこの世を去ることになる。
「……最高貴族様は〝ラスナ王国〟経由で〝バハマ王国〟へ向かっている筈です。私が知る情報はここまでです。お、扇をどけて貰えますか……」
兵士の言葉にスッと扇を仕舞う黒芒。
「〝バハマ王国〟か、これはまた反対方向じゃのう」
宙に浮かび始める黒芒は溜め息を漏らす。
*
やはり空を飛び空路を移動する黒芒は速い。
数百kmある国から国への距離を数十分で移動する。
〝バハマ王国〟王宮
国に着くや否や、またもや黒芒は強い魔力を纏った金色と漆黒の扇で王宮を割る。
世界広しと言えどもこんな短時間に二度も王宮を割った者は歴史的にも黒芒ぐらいだろう。
そして漸く黒芒は探し回ったその影を見つけた。
鎖に繋がれた奴隷に跨がる、小太りの身なりだけは良い中年の男と性格の悪そうな中年女性に二人より二周り程若いこちらも小太りの男の人数は3名。
「おい、貴様が最高貴族か?」
割れた王宮の空から黒芒がゆっくりと降りてきて、そう問いかける。
「何だ、貴様! 無礼であろう! 頭を垂れい! 我らをリュゼ家と知っての狼藉か!」
「なんじゃ、この豚は? こんなのに小童の両親は殺されたのか──」
ふつふつと怒りが再沸騰して来る。
「上玉の女で少し勿体ないが殺せ! 八つ裂きにしてやれ! 我らに牙を向いた狼藉、その命を持って償わせろ!」
最高貴族が叫ぶ。するとこれでもかと兵士が現れ直ぐ様に黒芒を囲む。
「ふむ、1人か」
囲まれた黒芒がポツリと呟く。
「おいおい何言ってんだコイツ」
「1人だってよ! この人数が見えないのか!」
「殺っちまおうぜ!」
多勢に無勢とばかりに勝ちを確信する兵士たちは気が抜けている。
次に黒芒が扇を振るうと、瞬く間に振るった魔力を纏う扇の力は、斬撃となり兵士たちを一瞬で壊滅させる。
血の雨が降る王宮に黒芒は不機嫌そうに呟く。
「はよ、出てこい。貴様がこの国で一番強いのだろう? 妾と戦えるとしたら貴様だけじゃ──」
黒芒の視線の先は、最初に王宮に放った扇の飛ぶ斬撃が止まった場所。否、正確にはそこで止まったのでは無い。止められたのだ。
「こんな王宮なんぞ綺麗に真っ二つにしてくれようと考えていたんじゃがのう? 予定が狂うたわ」
現れた人物の背丈は大きい身長は3mと少しといった所だろう。168cmの黒芒と比べると倍近くある。
兜を被り後は腰巻き1枚の筋肉質の男だ。
手には鎖で繋がれた巨大な鉄球を持っている。鉄球の重さは2トンは下らないだろうと黒芒は見る。
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