第551話 千の妖の黒き芒13
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──その夜〝ナーバリデッジ帝国〟に〝千妖〟が舞い降りた。
目指すはリュデ家の首。
国家を敵に回すことに黒芒に迷いは無かった。
季節にしては冷たい風が吹いた。
次の瞬間、宙に浮かぶ黒芒の持つ金色と漆黒の二本の扇が王宮を真っ二つに割った。
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「敵襲! 敵襲!!」
「何の騒ぎだ!!」
「王宮が割れたぞ!!」
「戦闘態勢を取れ! 並みの奴じゃないぞ!」
王宮は大パニックだった。
「──さて、リュデ家と言うのはどいつじゃ?」
宙に浮かぶ黒芒はアリのように這い回る帝国兵士に問いかけた。
向かってくる帝国兵を蹴散らしながら、ふと黒芒は問う。
「にしても、妙じゃの? 帝国のトップとは皇帝の筈〝最高貴族〟とは皇帝をも支配するのかのう?」
すると如何にもな権力者ですという豪勢な格好をした人物が現れる。
「せ、千妖……!?」
男は黒芒を見るや否や一歩後ずさる。
「そなたか? リュデ家というやつは?」
鋭い黒芒の声の前にまるで蛇に睨まれた蛙のように男は動けなくなる。
「違う、私は皇帝である! 身を弁えよ!」
「そなたも嫌な匂いがするのう?」
次の瞬間、音も無く黒芒の背後から剣が振るわれた。
だが、扇一つで易々と受け止める黒芒。
「浅い一撃じゃ〝天聖〟との戦いの後だと余計じゃの」
黒芒は簡単に受け止めているが、攻撃して来たのは帝国の兵団長クラスの人物だ。
「ちっ、ミスりやがって、使えねぇ糞が。てめぇにいくら払ってると思ってんだ!」
皇帝は本性を現したかのように口汚い言葉で吐き捨てる。
腹いせとばかりに皇帝の男は足元にいたボロボロの〝猫人族〟の男を足蹴りにする。足枷、首輪が付いている。奴隷だ。
「貴様の首は取っても問題なさそうじゃのう?」
「待て、待てって、お前は勘違いしている。私はリュデ家ではない!」
「勘違い? 違うの、貴様がリュデ家では無いのは分かった。じゃが、貴様は害悪じゃ、要らぬ犠牲が出る前にここで首を取るのもまた一興というものじゃの」
言葉が終わると、皇帝の首が宙を舞っていた。
次にガシャンと〝猫人族〟の奴隷の男の足枷と首輪が割れる。
「何処へなりと失せろ。もう捕まるでないぞ?」
頭を下げ逃げる奴隷を見送ると、黒芒は適当にそこら辺にいる腰を抜かす兵士の首に扇を当てながら問う。
「リュデ家はどこじゃ? 今日〝ラスナ王国〟を襲った奴じゃ、居場所ぐらい分かるじゃろう? 今の妾は最高に機嫌が悪いぞ?」
「……言えません。私が〝最高貴族〟様に殺されます」
声は震えている。本当に〝最高貴族〟が怖いのだ。
「選べ。今死ぬか、妾が〝最高貴族〟を殺す可能性に賭けてまだある余生を楽しむか──」
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