第550話 千の妖の黒き芒12
「──何があった!? 洗いざらい話せい」
「ヒッ……!? せ、千妖!?」
目の前にいるのが黒芒だと分かると、慌てふためいたギルド職員は目を回し気絶してしまう。
「お、、これは今朝の千妖様。〝回復薬〟をお探しで?」
「…………露店の酒を売ってくれた老婆か。そうじゃ〝回復薬〟を探しておる」
「ならば、これを使いなされ。これも何かの縁。それにあの千妖様に恩を売れるなら、安いものじゃ」
ヒヒヒと怪しげに笑い〝回復薬〟を渡して来る老婆に黒芒は感謝を告げる。
「すまんの、助かる」
腕に抱かれた少年に〝回復薬〟を浴びせると、老婆に視線を向き直す。
「それで何があった?」
「〝ナーバリデッジ帝国〟にいる最高貴族、リュデ家ですじゃ。武装した兵士を引き連れた最高貴族が街に現れ、あれやこれやと有ること無いこと、終いには埃っぽいという理由だけで、街の家に火を放ち、住民を殺して回りました。その坊やもそのいざこざに巻き込まれたのでは?」
ピリッと、黒芒の殺気でその場の空気が冷たいものに変わった。
「おい、老婆。小童を頼んでもよいか?」
金貨を1枚、老婆に渡しながら黒芒は尋ねる。
「ヒヒヒ、気前が良いですや。目が覚めたら街の教会に預けますがよろしいですかの?」
「構わん、後は小童の好きにさせい」
そう言い残すと殺気だった黒芒はギルドを立ち去る。行く先は決まった。〝ナーバリデッジ帝国〟だ。
*
ああ、人類とは何と愚かな者だろうか。
争い、奪い、壊し、殺す。
いや、一概にも全員がそうとは言えないのも黒芒は知っていた。
少なくとも優しい守るべき人類も僅かながらいることに。
〝善人ほど早く死ぬ〟とはよく言った物だ。
人を殺したから悪人と呼ぶのだろうか? と、黒芒は考える。否、ならば人の世にある。罪人を裁く死刑と言う物に矛盾が生まれる。
だからこれから自分が行う行為は悪ではない。
殺すべき人間を殺すことは悪行と呼ばない。
まあでも、例え、誰かに悪と悪人と呼ばれ指を指されようとも黒芒は止まる気はなかったが。
「〝最高貴族〟か、昔から頭のおかしな行動をする連中じゃったの〝ナーバリデッジ帝国〟までは少しあるか」
黒芒は空を移動する。空路を使えば〝ナーバリデッジ帝国〟まではあっと言う間だ。
〝最高貴族〟は世界に三家存在する。
リュデ家・ハンジ家・オウル家。
どれもこれも権力で人を人とも思わない悪逆非道な行為を行う、どうしようもない連中だ。
いっそ、魔王にでも滅ぼされればいいと黒芒は割りと本気で思った。
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