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第54話 ゴゴゴゴ……



 *


 ギルド直属〝第3騎士隊〟と〝第8騎士隊〟の2隊の本隊は〝魔王信仰〟が現れ、その内の一人に〝禁術〟を使った者が現れたと言う場所に到着すると……


 ──既に、戦いは終わった後であった。


 到着した場所の地面には、一部が大きく〝(サークル)状〟に黒く焼け焦げたような形跡がある。


 そして〝アーデルハイト王国〟の兵士によって、全身を如何(いか)にもという、怪しげなマントに身を包み、顔は目元以外を黒い布で覆い隠した〝魔王信仰〟の者が、拘束されている。


 その〝魔王信仰〟の者達は全員が気絶しており、その誰もが魔法を使う気配は愚か、指一本とて動かす気配は無かった。


「──何よこれ! ()()()鹿()はどこに行ったのよ!」


 そう不機嫌な様子で呟くエメレアは、


「しっ、エメレアちゃん、任務中だよ?」


 と、クレハに言われ、


「う、ごめんなさい……」


 と、直ぐにショボンと静かになる。


 そのエメレアの後ろからはミリアが、とことこと辺りを警戒しながら、少し駆け足でついてくる。

 

 すると音も無く、先頭を歩く第3騎士隊長のヴィエラと第8騎士隊長のシスティアの目の前に、一人の執事服を着た年配の男性が現れる。


「これはこれはお忙しい中、駆け付けて頂き、感謝申し上げます。申し遅れましたが、私は〝アーデルハイト家〟の執事長を勤めております──ジャン・ウィリアムと申します。以後、頭の片隅にでも留めておいて頂けたら幸いでございます」


 その男性は〝老紳士〟と言う言葉がとても似合う姿や立ち振舞いで、手本のように綺麗なお辞儀をする。


「遅れてしまい申し訳ありません。この都市のギルドから参りました。ギルド第3騎士隊長のヴィエラ・フローリアと申します!」

「同じくギルド第8騎士隊長のシスティア・エリザパルシィと申します!」


 現れたジャンに、二人はビシッと敬礼をする。


「ほほ。こんな老いぼれに、そんなお気を使う必要はございませんぞ。皆様、お気軽に接してくだされ」

「いやはや……()の〝千撃(せんげき)〟殿を頭の片隅にとは、流石に恐れ多いのですが……んッ、ん、失礼、申し訳ありません」


 まだ〝魔王信仰〟が潜む可能性がある、この状況下での返答としては、気を抜き過ぎというか、少し失言だったかと思い、システィアは軽く咳払いをし謝罪する。


「いえいえ、何も謝ることはございません。ですが、お越しいただいた所を申し訳ありませんが──奇襲を仕掛けて来た〝魔王信仰〟の者共は、既に無力化済みでございます〝禁術者〟もこちらの都市の()()()()により討伐済みでございます」


 ジャンが話し終わった。

 丁度、その時。


 空から、バサリ! と音を立てながら──


「お話中、失礼します、ヴィエラ隊長!」


 上空から辺りを監視していた〝鳥人族(ハルピュリア)〟の緑髪に〝短髪(ショートカット)〟の第3騎士隊所属の少女──フィオレ・フローリアが降りてくる。


「ご苦労様、フィオレ、状況はどう?」


「〝禁術者〟は〝千撃(せんげき)〟殿の言う通り、冒険者の──ユキマサ殿によりに討伐されました。それと、付近の住民への被害も最小限に抑えられたかと思われます。少なくとも現在、住民や兵士の方々の負傷者並びに死者は確認されておりません」


「そう、分かったわ。ご苦労様。引き続き、空から監視をお願いできるかしら?」


「了解しました」


 と、返答し一礼した後、バサリと翼を広げ再びフィオレは上空からの監視へ戻る。


「ジャン殿。捕らえた者はどうなさるおつもりですか? 差し支えなければ、ギルドで聴取を行った後、私共から、この都市の憲兵に引き渡しますが?」


 捕らえられた〝魔王信仰〟の者を横目に見ながら、システィアがジャンに問いかける。


「それはありがたい申し出ですが……もしよろしければ、その場に私も立ち会わせていただいても、よろしいですかな? 少し聞いてみたい事がございますので……」


「勿論構いません。それと、つかぬ事をお伺いしますが、その〝冒険者〟──ユキマサは、今どこにいるのでしょうか?」

「ユキマサ殿でしたら、アリスお嬢様とフィップ先輩を連れて、街の方へ向かったみたいですぞ?」


「お、王女様と〝桃色の鬼(ロサラルフ)〟殿とですか……!?」


「ええ、アリスお嬢様もですが──あの、フィップ先輩まで彼を気に入った様子で私も驚きました」


 ──その話を、システィアの後ろで聞いていた、エメレアが……


 「あの、変態スカっ(たら)し男……今度は王女様と、一部では──()()()()とか呼ばれてる〝桃色の鬼(ロサラルフ)〟と何やってんのよ!?」


 と、呆れたエメレアが、ふと、隣を見ると……


「ひゃッ!? く、クレハ? ど、どうしたの?」


 エメレアの隣にいるクレハが目を細めながら、


「ふーん……ユキマサ君、また他の美人の女の人と仲良くなってるみたいだね……そうなんだ……ふーん」


 と、表情は微かに笑ってはいるが、目が全く笑っていなかった。そして、クレハから誰に向けてかは分からないが、全身からゴゴゴゴ……! という効果音が似合う、凄まじい圧が感じられる。


「エメレアちゃん……ミリア……?」


「ひゃい、じゃなくて、はい、な、何かしら?」

「く、クレハどうしたの!? 何か、ゴゴゴゴ……! ってしてるよ……!?」


 クレハがそのままの表情で二人の方を振り向くと、この二人でも見た事の無い、心底不機嫌そうなクレハを見て、エメレアとミリアは珍しく慌てている。


 そしてミリアよりもエメレアの方が、言葉を噛むというのも、これはこれでまた珍しい出来事だ。


「ユキマサ君には『夕御飯までには帰って来てね』って伝えておいたから、恐らくそれまでには帰って来ると思うから、急いでお仕事片付けないとだね!」


 にっこりと笑ってはいるが、怖いぐらい顔の筋肉だけで笑っており、誰がどう見ても作り笑いである。


「そ、そうね、頑張りましょ……!」

「わ、私も頑張るよ……!」


 二人は半ば気圧される形で、首を必死に縦に振り、目の前の静かに怒るクレハを、これ以上怒らせてはいけないと察し、仕事に(いそ)しみ始める。


「でも……こういうクレハも……私的には、これはこれで……あ、いえ、クレハは素直な笑顔が一番よね!」


 そんな事を小さく呟き、何やら考え込む様子のエメレアの言葉は、誰の耳にも届かず、辺りの騒音に掻き消されるのだった──。




 ★★★★★★作者からのお願い★★★★★★


 作品を読んで下さり本当にありがとうございます!


・面白い

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 (また、既に評価、ブックマーク、感想をいただいてる皆様、本当にありがとうございます! 大変、励みになっております!)


 ★5つだと泣いて喜びますが、勿論感じた評価で大丈夫です!


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