表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
547/864

第546話 千の妖の黒き芒8



「──風邪を引くとは、人間とは、ひ弱よのう」


 優雅にティーカップに入った紅茶を口に運ぶ黒芒のその姿は狭い借家ながらもさながら絵になっていた。


「黒芒様、改めまして、こんな所までお越しいただき本当にありがとうございます!」

「そなたは小童の父親か? それに妾を知っておる口振りじゃのう? 何処かで()うたか?」


 黒芒は〝千妖〟の二つ名と合わせて世界的に有名だ。時代を代表する実力者の一人でもある。

 だが、少年の父親の口振りは有名だから知っていると考えるには少し違った。


「申し遅れました。私は源氏(げんじ)、こっちは妻の久恵(ひさえ)でございます。黒芒様には──」

「──黒芒さんは僕がまだ物心もつかない頃に、魔物に襲われた僕たち家族を助けてくれたんです。黒芒さんは僕たちの命の恩人なんです!」


 ゴホゴホと咳ごみながらも少年は嬉々として話す。


「覚えとらんのう? 魔物なんぞ、今迄にそれこそ星の数ほど倒したからの」


 ぶっきらぼうにそう言った黒芒は空になったティーカップをテーブルに置く。おかわりをと源氏に言われたが黒芒は不要じゃとばかりに手でジェスチャーし、それを止める。


「黒芒様が覚えてなくても、私たちは昨日のことのように覚えています。本当にありがとうございました。あの時、お礼も言わず、怯え逃げ去ってしまった我々は悔やんでいました。息子からあなたの話を聞いた時は思わず耳を疑いました」

「本当なら息子から話を聞いた時に直ぐにあなたにお礼を言いに行くべきでした。申し訳ありません。そして本当にありがとうございました」


 源氏と久恵は深々と頭を下げた。

 それに続くように少年も頭を下げる。


「礼などよい。所詮は妾の気まぐれじゃ」


 そう言い黒芒は席を立つ。


「あ、もういっちゃうんですか!?」

「妾の用事は済んだ。ここに長居する意味はない」


 坦々と告げると黒芒は少年の家を後にした。


 *


 黒芒は杯に注いだ酒を片手に近い昔を思い出そうと頭を捻っていた。

 昔、会ったと言う少年とその両親のことを。

 だがダメだ。本当に思い出せない。別に酒を飲んでいるから頭が回らないと言うワケではない。

 本当に記憶していなかったのだ。


 黒芒は星から生まれ、幾世霜の長い時を生きてきた。

 いつからか人に興味を失くし、記憶することを忘れていた。いや、記憶しないことにしていた。

 黒芒の持つ時間にすると、人の一生などほんの一瞬でしかないのだから。思い出を作ると作っただけ別れが悲しいから。


 月夜に一人酒を飲むようになったのは一体いつからだろうと黒芒は考えたがそれも答えは出ない。


「そうよのう。そなたはいつも妾を見下ろしていたのう。妾よりも先に生まれ、きっと妾よりも後に消えるのじゃろう。そう考えると同情するぞ……」


 月を見上げ月に話しかける黒芒は少しばかり酒に酔っていたのかもしれない。そう本人は思ったという。



 ★★★★★★作者からのお願い★★★★★★


 作品を読んで下さり本当にありがとうございます!


・面白い

・続きが気になる

・異世界が好きだ


 などと少しでも思って下さった方は、画面下の☆☆☆☆☆から評価やブックマークを下さると凄く嬉しいです!

 (また、既に評価、ブックマーク、感想、いいねをいただいてる皆様、本当にありがとうございます! 大変、励みになっております!)


 ★5つだと泣いて喜びますが、勿論感じた評価で大丈夫です!


 長々と失礼しました!

 何卒よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ